特許権の海外出願動向 海外出願は拡大傾向 三枝国際特許事務所 副所長弁理士 中野睦子氏

国ごとに異なる特許制度に注意

食品業界でも国内だけでなく海外マーケットを視野に入れた国際出願が拡大する。三枝国際特許事務所は海外特許出願国80か国以上を誇り、多くの国での出願実績を持つ。海外出願を行う上での注意点やスムーズな権利化への取り組みなどについて三枝国際特許事務所副所長弁理士の中野睦子氏に聞いた。

――食品業界の海外への特許出願の動向はいかがですか。

中野 海外マーケットへの進出を検討する企業が増える中、特許出願においても日本国内のみでなく、海外出願を視野に入れた相談をいただく機会は増えている。出願国は米国、欧州、中国がメーンで、今後ビジネス展開を考える国や原料の輸入国、製造国を加えた3~5か国への出願が多い。

――海外へ特許出願を行う上での注意点は。

中野 国ごとに特許制度が異なる点に注意が必要だ。例えば、ベトナムやインドはそもそも用途発明を認めていない。この場合、成分の組み合わせや割合を限定し、物質の構成そのものが既知の食品と差別化できれば権利化を進められるが、用途しか新しくない場合は特許出願しない検討も必要だ。また、出願後は当初の明細書に記載がない事項は補正できないため、権利化する国ごとに、その国特有の制度を熟知した上で明細書を作る重要性も高い。

――国によって、特許出願制度が異なるのはなぜですか。

中野 特許制度は自国の経済発展を支える制度でもある。経済が急成長している国でも技術面は発展途上中のことも多い。技術・経済ともに発展した国と同等の制度を設けた場合、外国企業に特許出願をされて、独占権を得られてしまう。自国の企業が他国の企業の特許権に縛られることなく自由にビジネスを行い、国の技術・経済を守り発展させるために国ごとの特許制度を設けている。また、用途発明を認めている国でも特許申請の際に記載するクレーム(保護を求める権利範囲)の書き方は国ごとに相違するため、出願する国に適した複数のクレームを記載するなどの対応が必要だ。

――同じ用途を指す場合でも国ごとにクレームの記載が異なるということですね。

中野 国際出願を視野に入れている場合は、どの国に出願を検討しているかを予め弁理士に伝えておくことが大切だ。そうすることで、自社が希望する出願国でスムーズに権利化できる明細書の作成につながる。

――国際出願を行う上で御事務所が注力していることとは。

中野 弊所では、各国において信頼がおける特許事務所と連携できる体制を整えている。現地特許事務所によって権利化に強い、訴訟に強いなど特性があり、それに応じて値段も異なる。海外でスムーズに権利化するためには、クライアントの要望に合った特許事務所を選択しなければならない。また、海外も含めて弁理士は競合する企業の案件を双方代理することはできず、いざ海外出願する段階で「その分野は受けることができない」と断られるケースもある。

――いずれも、国ごとに複数の特許事務所とコネクションを持つことでリスクを回避できますね。

中野 そのためにも各国の特許事務所と信頼関係を築くことは重要だ。クライアントがよりスムーズに安心して海外で権利化できるよう、現地の弁理士の能力の高さはもちろん、期限管理や請求書の発行および書類発送手続きを行う事務セクションがきちんと機能している点も大切である。これらを重視しながら提携を行う特許事務所の選別を行っている。