紅茶飲料で随一の高品質製造設備 三井農林須玉工場

テトラ・ジェミーナ・アセプティック容器の新ライン。製造能力は1時間約7,000本(三井農林須玉工場)
テトラ・ジェミーナ・アセプティック容器の新ライン。製造能力は1時間約7,000本(三井農林須玉工場)

業務用製品で磨き上げた独自の抽出

三井農林の須玉工場(山梨県北杜市須玉町)は、紅茶飲料の製造において原料茶葉の調達から抽出・充填・製品化まで一貫して行っている点と、こだわりの独自抽出ができるという点で一般的な飲料工場とは一線を画している。

一般的な飲料工場は、巨大なポット(ニーダー)に湯と茶葉を入れてかき混ぜた後に傾けて抽出するニーダー抽出機を使用することが多い。大量の原液を抽出するには適しているが、「細かな抽出条件の調整は難しい」と取材に応じた樋口誠須玉工場工場長は説明する。

須玉工場の樋口工場長(三井農林)
須玉工場の樋口工場長(三井農林)

同工場では、このニーダー抽出機に代わるものとして、独自の抽出機を使用している。

「たとえばレギュラーコーヒーに湯を注いでドリップすると、香りを感じられる一方、液中には香りが残らない。同じことがお茶の抽出でも発生するが、それを避けるために、香りを収集し、その香りを急冷して液の中に残すことができる」。

同機は通常よりも高濃度で抽出することも可能で「通常、濃縮機を使ってしまうと香りが飛散してしまうが、この抽出機では、抽出だけで濃度が高まり、香りも維持される」。

須玉工場は、これまで裏方として様々な受託製品を手掛けてきた。その経験の中で抽出技術を積み重ね、一般のペットボトル製品などでは実現が難しい「香り」を上手く残した製品を作ることを実現したのである。

同社が飲料の高付加価値・高品質化を強く志向するようになったのは、現在、業務用やギフト・通販で展開している瓶容器の高級品「Cold Brew Tea」シリーズを開発したことがきっかけだった。

同製品は、10度以下の低温で抽出することで渋みを抑え、揮発しやすい華やかな香りを抽出液の中に閉じ込める独自製法でつくられている。

これらで培ってきた技術が家庭用製品「日東紅茶 フルーティーリッチ」シリーズへのチャレンジにつながっている。(写真下記事続く)

左右に2台設置されている独自抽出機(三井農林須玉工場)
左右に2台設置されている独自抽出機(三井農林須玉工場)
シャワー抽出機。上から原料を投入し下部でシャワーをかけて抽出する
シャワー抽出機。上から原料を投入し下部でシャワーをかけて抽出する
むぎ茶の高濃度抽出機
むぎ茶の高濃度抽出機

培った技術で家庭用製品へチャレンジ

同工場の製品は業務用やOEMが中心で消費者が直接手にする機会は少ないが、19年にはテトラ・ジェミーナ・アセプティック容器の新ラインを立ち上げ、「日東紅茶」ブランドの飲料製造にも注力し始めた。

同容器は、大きめのワイドキャップ付きで開けやすく、注ぎやすく、液切れもよいのが特長。高品質の紅茶飲料「日東紅茶フルーティーリッチ」シリーズ(1ℓ)に採用され、今春からスーパーや量販店で発売されている。

同製品を皮切りに家庭用飲料全般について樋口工場長は「須玉工場では紅茶だけでなくコーヒー、果汁など多彩なカテゴリーの製品を製造している。高付加価値・高品質製品に対応した独自の抽出技術が強みで、今後はライン増強などを検討して自社製品比率を上げていきたい」と意欲をのぞかせる。

「日東紅茶 フルーティーリッチ」シリーズと瓶製品をアピールする米澤洋朗氏(三井農林)
「日東紅茶 フルーティーリッチ」シリーズと瓶製品をアピールする米澤洋朗氏(三井農林)

「日東紅茶 フルーティーリッチ」シリーズは、春先に「ラ・フランス&ティー」と「ピーチ&ティー」の2品を発売し、9月下旬から「ピーチ&ティー」を新商品「グレープ&ティー」に差し替えて発売している。

その販売状況と今後の展開について、商品企画・マーケティングチーム商品企画ユニットの米澤洋朗氏は「上期は希望小売価格440円に設定し関東限定で販売したところ、想定以上に単身世帯やご高齢の方が多くいるエリアで販売が好調だった。下期は販売エリアを東日本へ拡大するとともに、より多くの方に楽しんでもらいたいと考え、オープン価格にして価格に弾力性を持たせた」。

「日東紅茶 フルーティーリッチ」シリーズをはじめとする飲料製品は日本百名山の八ヶ岳水系の水を原水として使用。パッケージ裏面の「PRODUCT OF SUTAMA」のロゴ(右下)
「日東紅茶 フルーティーリッチ」シリーズをはじめとする飲料製品は日本百名山の八ヶ岳水系の水を原水として使用。パッケージ裏面の「PRODUCT OF SUTAMA」のロゴ(右下)

現在、展開している「ラ・フランス&ティー」と「グレープ&ティー」は、フルーツとの相性のよい希少なダージリン茶葉を100%使用し、フルーツは山形県産ラ・フランスや国産巨峰など厳選した国産果汁を使用した。

2品とも「茶葉とフルーツのどちらも引き立つようにブレンドした。フルーツの甘さのあとに紅茶を感じられるようにし、紅茶の会社が作る本物のフルーツティーとしてパーティーシーンなどでのニーズを訴求していく」。

店頭での試飲販売やサイト上でのサンプリングも展開し、春夏と秋冬の半期に1度のタイミングで今後もフレーバーの展開を拡充していく構えだ。
「フルーツティーという分かりやすいところから入ったが、本格的な紅茶飲料も順次投入していきたい」。

ノウハウ最大に生かした高品質ライン

一方、瓶容器の「Cold Brew Tea」シリーズは1本5千円(税抜き)の販売価格で、高級ホテルや料亭などに採用されている。

瓶容器の「Cold Brew Tea」シリーズ(三井農林)
瓶容器の「Cold Brew Tea」シリーズ(三井農林)

同シリーズのラインアップは、世界三大紅茶であるダージリンにある名茶園「Happy Valley」で春摘みされた有機栽培茶葉のみを使用した「Darjeeling First Flush」、日本茶AWARDなどの受賞歴を誇る静岡の名茶園「井村製茶」の茶葉を使用した「和紅茶」、玉露の三大産地である静岡県朝比奈産の有機栽培碾茶(抹茶の原料)を100%使用した「碾茶」の3つ。

「和紅茶」や「碾茶」は国内の茶生産者のサスティナブルな生産にも寄与しうる。「当社は1926年から紅茶の生産を本格的に開始し、1927年から日本で最も歴史ある紅茶ブランドとして販売を続けてきた。

三井農林須玉工場・外観
三井農林須玉工場・外観

広告活動や紅茶の普及・啓発活動を行う一方、戦後には国産品種紅茶の育成改良にも力を入れ日本の紅茶産業をリードしてきたが、1971年に紅茶の輸入が自由化されると、海外勢におされ他の日本ブランドが撤退。当社は踏みとどまったが、和紅茶の生産は激減した。

近年、緑茶農家が茶葉価格の低下や高齢化により疲弊する中、そういった歴史をもつ当社が率先してティーバッグの『純国産紅茶』や上述の『Cold Brew Tea』シリーズといった価値を付けた製品を販売していくことで、和紅茶を盛り上げ、産地振興を後押ししていきたい」と商品企画・マーケティングチームマーケティングユニットリーダーの阿部慎介氏は説明する。(写真下記事続く)

井戸水の受水槽㊧と純水設備(三井農林須玉工場)
井戸水の受水槽㊧と純水設備(三井農林須玉工場)


つくるだけでなく環境への還元も

三井農林須玉工場は、山梨県北杜市須玉町の標高約650mの位置にあり、北に八ヶ岳、西に南アルプスを望む。そんな雄大で美しい自然環境の中にある同工場は、主な廃棄物である茶殻の処理においても環境に配慮した取り組みを行っている。

「自社の研究で、抽出後の茶殻を鶏糞に混ぜて発酵させると、鶏糞が無臭化することを発見した」ことから、茶殻は山梨県甲斐市にある「黒冨士農場」に送られ土壌改良に使われ、畜産公害の解消・飲料工場残渣の利用・有機物による地力の回復などに寄与している。

そのほかにも、三井農林と黒冨士農場は1991年に提携してパイロットプラントを建設。研究を重ねて茶ポリフェノール含有の有機質肥料「収穫祭・茶葉ぼかし」を開発するなど、地域に根差し、サスティナブルを強く意識した経営を行っている。

須玉工場で製造される飲料製品㊤と紛体製品(三井農林須玉工場)
須玉工場で製造される飲料製品㊤と紛体製品(三井農林須玉工場)
サイロから投下された茶殻(三井農林須玉工場)
サイロから投下された茶殻(三井農林須玉工場)