優良コーヒー生産者の家にトイレがない 「良質なものに適正な対価を払う」丸山珈琲の原点

丸山珈琲が、生産者の収入を意識して高品質のスペシャルティコーヒー豆を販売している原点は、コーヒーバイヤーでもある丸山健太郎代表が中米のホンジュラスで目の当たりにしたコーヒー生産者の暮らしぶりにある。

国際品評会カップ・オブ・エクセレンス(COE)15位の生産者を訪れ、その生産者の家庭にトイレがないことを知ったのが始まりだった。

「お手洗いを貸してくださいとお願いしたら『ありません』と言われショックを受けた。COE15位はワインでいえばグラン・クリュのレベル。その生産者がなぜベースの暮らしができていないのか。そのとき以来、『素晴らしい生産者は受け取るべき収入を受け取らないといけない』が私のモチベーション」と語る。

丸山代表が初めてホンジュラスを訪れたのは2004年。この年開催された第1回ホンジュラスCOEの優勝者からコーヒー豆を買い付けたのを契機に、09年までは「失敗の連続だった」と振り返る。

コーヒーの品質は届いてみないと分からず、生産者にビジネスの概念を理解してもらうのに時間を要したという。

突破口が開けたのは、コーディネーター兼運転手のサロモン・メヒア氏との出会い。同氏が仲介役となり現在も取引関係にあるカングアル村のコーヒー生産者グループにたどり着く。同氏は09年のカングアル生産者組合の結成にも一役買い、銀行から融資を受けられるようにした。

「いろいろなことがあり何度もやめようと思ったが、サロモンさんのお陰でホンジュラスでは奇跡的にうまくいっている。退いてしまった他の国のバイヤーをたくさん知っている」と感謝の意を表する。

冒頭のトイレがない家庭は、カングアル村のリーダの話で、ホンジュラス西部の山深いところにあるカングアル村は、世界最貧エリアの一つとして国連にも認定されている。

都内のイベントでホンジュラスを紹介(丸山珈琲)
都内のイベントでホンジュラスを紹介(丸山珈琲)

カングアル村で丸山珈琲とかかわり、コーヒーの品質向上とともに暮らしぶりを改善した好例の一つにマリア・サントス氏の取り組みが挙げられる。

同氏は5人の子どもを育てながら農園を女手一つで切り盛りし、年々コーヒーの品質を向上。当初16俵だった収穫量は28俵に増えて生活が安定し、今では小型のソーラ発電パネルを備えて夜間に子どもたちが勉強できる環境を整えられるまでになったという。

村全体も「10年前は40家族のうち2家族しか車を持っていなかったが、今は40家族のうち車を持っていないのが2家族」と様変わりした。

丸山珈琲では、優良な生産者からダイレクトに高品質コーヒー豆をニューヨーク先物取引市場の相場価格よりも高いプレミアムで買い付けている。

「プレミアムが地域に与えるインパクトは凄く、消費国でおいしいコーヒーに少し高いお金を払ってもらえれば、こういうことができる。私の仕事は、素晴らしいコーヒーを見つけて、その魅力をちゃんと伝えて消費者に楽しんでもらい、それを生産者に返していくことにある」と語る。

同社は9月14日、都内で各国の生産者や農園を紹介する「Discover Coffee Project」の一環でホンジュラスにフォーカスした「Discover Coffee One day Cafe feat,Honduras」を開催。ホンジュラス特命全権大使のエクトル・アレハンドロ・パルマ・セルナ氏ほか、サロモン・メヒア氏、マリア・サントス氏ら生産者を招き、さまざまな角度からコーヒー生産国・ホンジュラスを紹介した。