波乱の海苔業界、就任1年目は災害と凶作の試練 やま磯・磯部玄士郎社長

昨年5月、父の磯部茂見前社長(現会長)からバトンを引き継いだ。社長になって大きく変わったのは「自分自身が最終判断をしなければならない」ということ。トップとしては当然と言えるが、就任1年目はそういう場面があまりにも多かった。

就任間もない7月初め、人気番組「林修の今でしょ!」で海苔の健康効果が取り上げられ、放映翌日から家庭用の販売が急伸。業界としては追い風が吹いたが、うれしい悲鳴もつかの間、そのわずか3日後に未曾有の大災害となった西日本豪雨が襲う。

本社のある広島市矢野地区は県内でも、極めて甚大な被害を受けた地域だ。幸い工場や事務所に直接的な被害はなかったものの、住居が被災したり、道路が使えず通勤できなくなった従業員も少なくなかった。「何とか工場が動かせるようになっても周辺の道路が使えず集荷の車が来られない。製造・在庫が通常に戻るまで3か月近くかかった」と振り返る。「そういう状況でも社員が出勤してくれ、本当にありがたかった」。

判断を迫られたのは、それだけではない。周知の通り、前年度の国産海苔生産量は63億枚と、実に46年ぶりの凶作に見舞われた。加えて食品業界全体の課題でもある人件費や物流費の高騰も続いており、今年7月、家庭用海苔の値上げに踏み切った。

「海苔の生産が減っていることが注目され、消費者の海苔に対する見方も変わってきた。今後生産量が増えるとは考えにくく、われわれも今まで以上に大事に売っていかなければならない」と気を引き締める。

家庭用の売れ筋商品がカップの「朝めし海苔」。「地元では定着しているが、全国的にはまだ浸透していない。関西、関東、九州などで重点的に拡売していきたい」。このほか、三島食品とのコラボ商品「ゆかり味のり」、南高梅を使った「紀州南高梅味のり」(いずれもカップ)などが堅調に動いている。

有明産一番摘み海苔使用「極旨味のり」(やま磯)
有明産一番摘み海苔使用「極旨味のり」(やま磯)

現在、特に力を入れているのがカップの「極旨味のり」。有明産の一番摘み海苔を使った高品質な商品で、価格は500円と売れ筋の「朝めし海苔」(小売価格350円)に比べ150円高いが、順調に伸びている。

「ギフトでは中元・歳暮という習慣がなくなりつつある。これからは自分で食べておいしいと思ったものを贈る傾向が強まるだろう。普段から家庭で高い品質の海苔を食べていれば、何かを贈ろうという時、これを贈りたいと思ってもらえるかもしれない。『朝めし海苔』も普段スーパーで買っている人から、これを人に贈りたいという声があってギフト化した経緯がある」。

構成比は全社売上げの1割に満たないが、海苔に比べると全国へ行きわたっているのが、看板商品「さるかに合戦」をはじめとするふりかけだ。最近は“えごま”を使った「えごま海苔ふりかけ」、瀬戸内産の小いわしを混ぜた「こざかなフリッパー」などを商品化してきた。「体に良い素材を使い、健康志向をとらえていきたい」と意気込む。

【プロフィル】磯部玄士郎氏(いそべ げんしろう)=1973年4月10日生まれ。95年麻生福岡短大(現・九州情報大)卒業後、東京宝(現・TTC)を経て96年、やま磯に入社。2003年に取締役営業本部課長、08年専務取締役、昨年5月社長に就任。広島市出身。