海苔 大凶作の“劇薬”効果 量から質へ適応急ぐ

海苔業界にとっても前年度漁期の63億枚はさすがに少ないという意見は多いが、続く生産力の低下で「あり得た」とする振り返りも聞こえる。ここ10年でも好不調があり一喜一憂してきたが、基本は下目線の予想が大半を占めていた。背景には養殖漁家の減少や、引き継ぐ漁師も少なくなり、結果的に養殖網の総枚数も減少に転じていた。加えて温暖化による海水温の上昇と冬場の降下スピードの遅さ、さらに降雨が少なければ栄養塩も少なくなり終漁が早くなる。不作要因はすべて説明がつくものばかりだ。それだけに今後は約70億枚で平年作とみられ、それ以上なら豊作と呼べるものとなっている。

供給面で見れば海苔の国内総需要が約80億枚(2018年・食品新聞推計)に対して、前年度の国産が63億枚、これに輸入海苔(IQ総枠30億枚、実輸入15~20億枚)が加わるので現状で不足はない。少ないが在庫がある用途もある。

また、関心の高いコンビニ向けは共販(入札)がヤマ場を迎える1月に仕入れが開始され、価格的にも今や贈答向けのすぐ下にあり、大量出品なので仕入れ額もかなり大きい。よって大手の特定企業のみが参加する。むしろこの仕入れが片付かないと、その他の業務用や家庭用の仕入れが始まらない。端から見れば優先的だが、真っ先に確保されるので不作や大凶作でも同用途の心配は一番後回しということになる。

ただ、コンビニ向けはコンビニ自体の成長鈍化によって、店舗数の純増は抑えられる見込みだ。海苔需要の約3割を占める最大用途だが、ここも転換期が鮮明になっている。

また、量から質の重要ポイントは値上げだ。家庭用、業務用では今年の値上げを含めて多い企業で通算4回、少ない企業でも2回。まったく値上げをしなかった企業はないと思われる。特に今年は4月以降にテレビや新聞などで“大凶作”がセンセーショナルに報じられ、一般消費者も海苔の現状を知り原料高騰が理解される土壌が作られた。

もちろん海苔ユーザーに不安を感じさせるなど“劇薬”ではあったが、そもそも海苔業界が薄利経営になった一因に量的な逃げ道(低価格競争)もあった。ただ、今後は逃げるところはない。海苔の価格と価値の相互引き上げによって消費者に納得してもらう海苔市場を形成していかなければ単なる“海苔離れ”で終わってしまう。