缶コーヒー 努力実り回復の兆し 泡立ち、コラボ缶、原点回帰など多彩に

飲料全体の中で大きなボリュームを占めているショート缶をテコ入れする。ショート缶については、上位ブランドがコミュニケーションを弛まず続けてきたことが奏功した模様。最近ではペットボトル(PET)に流出したユーザーが戻るなど下げ止まりの兆候も見られ、潮目が変わる可能性も出てきた。

今秋冬、SOT缶に全力投球するのは「ファイア」(キリンビバレッジ)。PETコーヒーの「ワンデイブラック」が近く4千800万本(200万ケース)を突破する見通しで好調なこともあり、秋冬はSOT缶に傾注する。

注力アイテムは「挽きたて微糖」と「ブラック」の2品。ブランド全体で中味、パッケージ、コミュニケーションを刷新して10月8日に発売開始する。2品は既に全主要コンビニへの採用が決定している。

「ファイア」4品を刷新。「ブラック」は青い炎が目を惹くデザインに(キリンビバレッジ)
「ファイア」4品を刷新。「ブラック」は青い炎が目を惹くデザインに(キリンビバレッジ)

刷新の骨子について、増田健志マーケティング本部マーケティング部ブランド担当ブランドマネージャーは「『ファイア』がお客さまに提供できるものをゼロベースで考え直した結果、「お客さまの心に火をつけて、やる気を出してもらう」という結論に達し、今だからこそ、新しく見えて格好のよい缶コーヒーが提案できると考えた」と語る。

同社は、PET・ボトル缶・SOT缶を約50%の人が併飲し、併飲者はその時のニーズに応じて容器を選択していると分析。SOT缶ならではのニーズとして「気持ちを切り替えたい」と「さあ頑張るぞという気持ちになる」の2つを挙げる。

コミュニケーションは原点回帰を図り、俳優の桐谷健太さんを起用し「ファイア」発売当時(1999年)のCMソング「To Feel the Fire」を歌い上げる内容のTVCMを放映していく。

「CMで伝えたいのは鼓舞感とCMソング。桐谷さんがフルバージョンで歌うメイキング動画も公開して楽曲でも話題喚起を図っていく」という。

自販機限定のガンダムコラボ缶「ジョージア ニュータイプ」(コカ・コーラシステム)
自販機限定のガンダムコラボ缶「ジョージア ニュータイプ」(コカ・コーラシステム)

SOT缶の活性化にはコラボの選択肢もある。トップブランドの「ジョージア」(コカ・コーラシステム)は、機動戦士ガンダムのコラボデザイン缶で「エメラルドマウンテンブレンド」(エメマン)が前年を上回って推移しているほか、「グラン微糖」と「ディープブラック」が善戦している。

この勢いを加速させるべく、「エメマン」の活性化を目的に、ボトル缶「ジョージア エメラルドマウンテンブレンド プレミアム」を9月9日に期間限定で新発売した。

機動戦士ガンダムとのコラボデザイン缶は8月から第2弾を発売開始し、これに伴い自販機限定で微糖タイプのコラボ記念缶「ジョージア ニュータイプ」を期間限定発売した。

コラボのこれまでの手応えについて、日本コカ・コーラの新田祐一郎マーケティング本部コーヒーグループグループマネジャー(役職は取材当時)は「非常にワークしている。今あるものにニュースをつけて魅力的にするのが効率的だと思う。25周年の『エメマン』と40周年のガンダムの2つのニュースを掛け合わせたことも大きく、お互いでニュースを発信し効率的」と説明する。

「ワンダ」(アサヒ飲料)も8月20日から「モーニングショット」と「金の微糖」のSOT缶2品で「ルパン限定缶」を順次発売し、広告・キャンペーンとの連動を強めてブランドに磨きをかけていく。

河口文彦マーケティング本部マーケティング一部コーヒーグループグループリーダーは「広告でキャンペーンを認知してもらい、次に売場で限定缶を手に取ってもらって継続購買してもらう三位一体の構造をつくっていきたい」と述べる。

新発売の「カフェ・ド・ボス」(サントリー食品インターナショナル)
新発売の「カフェ・ド・ボス」(サントリー食品インターナショナル)

限定缶は、主人公のルパン三世をはじめ、次元大介、石川五右ェ門、銭形警部、峰不二子、作者のモンキー・パンチが描かれ、2品計で24種類を用意している。この中で峰不二子缶の出現率は低く、SNSなどによる話題喚起を見込む。キャンペーンも希少性を考慮し、25ポイントコースの賞品としてモンキー・パンチ作の「ルパン三世」水墨画シリーズ・レプリカバージョンを用意した。

SOT缶で離反したSOT缶ヘビーユーザーとともに若年・女性の新規ユーザーの獲得を狙うのは「ボス」(サントリー食品インターナショナル)で、9月3日に新発売した「カフェ・ド・ボス」2品は新規ユーザーをメーンターゲットに中味設計された新機軸商品となっている。中でも「ふんわりカプチーノ」は、ミルクを多めに使用し、液体の音が小さくなるまで振って泡立つ設計となっている。

コミュニケーションは、立川談春さんと岡崎体育さんを起用したTVCMを放映開始したほか、「ショート缶に興味を持たないお客さまに一度手に取ってもらえる施策をふんだんに用意しようかと考えている」(柳井慎一郎常務執行役員ジャパン事業本部ブランド開発事業部長)。

各種アルコールと合わせた“ブラックボール”を提案する「UCC BLACK 無糖」(UCC上島珈琲)
各種アルコールと合わせた“ブラックボール”を提案する「UCC BLACK 無糖」(UCC上島珈琲)

ブラック無糖カテゴリーで異彩を放つのは今年発売25周年の節目を迎えた「UCC BLACK 無糖」(UCC上島珈琲)で、3月に中味とパッケージを刷新して発売したところ前年を上回り好調に推移。現在、アルコールと組み合わせた“ブラックボール”などを提案して需要を喚起している。9月2日には25周年を記念してブルーマウンテンコーヒーを使用したブラック無糖のボトル缶を新発売した。

ボトル缶市場は、SOT缶以上にPETへの流出が大きく足踏みしている。こうした中、「タリーズコーヒー」(伊藤園)は手売り業態シェアトップの基幹商品「TULLY’S COFFEE BARISTA’S BLACK(タリーズコーヒー バリスタズブラック)」390㎖ボトル缶に引き続き注力していく。

「ワンダ極」(アサヒ飲料)は9月3日にミルク・砂糖入りの新商品「ジャパン ドリップ」を新発売し、今後は「微糖」「カフェオレ」「ブラック」3品のリニューアルを予定している。