うま味調味料への誤解、「無添加」表示が増幅 サイエンスベースの情報発信を 味の素

味の素社はこのほど、東京會館で「なぜフェイクニュースは消えないのか?うま味調味料(MSG)の安全性と風評について」をテーマにパネルディスカッションを開催。司会を含む6人のパネラーから風評が残る理由や無添加表示への意見などが交わされた。

パネルディスカッションは古田大輔メディアコラボ社長の司会で進められ、西島基弘国立医薬品食品衛生研究所食品添加物指定相談センター長、石川幹人明治大学大学院長情報コミュニケーション学部教授、鈴木志保子日本スポーツ栄養協会理事長、高取幸子味の素広報部サイエンスコミュニケーショングループ長が意見を述べた。

開催に先立ち、味の素の西井孝明社長は、うま味調味料(MSG)が風評と戦い続けてきた時代背景を説明し、「日本では1969年に新聞で取り上げられ、化学調味料への風評が始まった。90年代には安全性が証明されたが、総グルメ時代の中で科学的に安全性が証明され、うま味への評価は高まったが、化学調味料へのネガティブイメージだけが置き去りにされた」と解説した。

以下、各氏の主な意見は次の通り。

西島氏=MSGは法律的に指定添加物として、国が保証しているのにもかかわらず風評が広がっているのは驚きだ。消費者には添加物は体に悪く、無添加はいいというイメージがあり、メディアでも間違った意見が取り上げられ、風評を広めている。添加物は悪だとする中・高校生の教育も間違っている。

石川氏=牛乳やワクチン、電磁波には有害説があるが科学的根拠はない。専門家の総意で99%正しいと分かっても、どの分野でも若干の異論が残り、異論を唱える人の意見は突出して見える。だが人間は危険の方に敏感になり、1%の主張が半分以上になり、風評が大きくなってしまう。風評が広がるパターンには、自然信仰(天然が良い、人工は駄目)があり、これに対処するには、すべて自然が良いわけでないことを広めることだ。

鈴木氏=一般的に日本人は「添加」という言葉が嫌いで、手作りや天然が重要と言われがちだ。東京五輪に向けて食のレガシーとしても多様性が重要で、ベジタリアンやハラルも受け入れなければならない。外食や病院食にも普通に添加物が使われている。管理栄養士の養成にはうま味調味料の授業はないが、施設の調味料には塩分が少ないうま味調味料の方が良いに決まっている。授業単位で教えることは難しいが、これは現場で培われるものだ。

高取氏=化学調味料という曖昧な言葉が有用性をはばんでいる。無添加が善、化学調味料が悪の印象があり、無添加が安全であるという誤解を招き、不安をあおっている。MSGの安全性は実証されているが、無添加表示によって受け止めてもらえない風土もあり、今後は学校教育も含めて活動していく。SNSで間違った情報が拡販しやすくなったが、重要なことはサイエンスベースで伝え、専門家と関係を構築しながら情報発信することが重要だ。

吉田氏=ネット社会で情報共有が簡単になり、誤った情報、正確ではない情報が拡散する。ネットの時代で一人一人が発信者、拡散者になった。間違った情報は誤報、偽情報、不正確、ミスリーディング、根拠のない情報、風刺や冗談の6分類される。この情報にどう対峙していくかを考えなければならない。

西井氏=2019年から消費者庁で「食品添加物表示制度に関する検討会」がスタートした。添加物に関する誤解を増長するような表現や無添加表示を是正するような意見も出ている。無添加表示が添加物の信頼を失わせており、これを見直そうという動きも出ている。ぜひとも正しい施策として規制してほしい。