緑茶で認知症予防を 伊藤園が「豊かに生きる知恵」発信

都内で開催された「伊藤園健康フォーラム」。秋に第2回を予定
都内で開催された「伊藤園健康フォーラム」。秋に第2回を予定

――緑茶を毎日1杯以上飲む群は認知機能低下リスクが約3分の1に減少

――お茶会は、前頭前野を刺激する

――お茶に含まれるテアニンが神経細胞を再生促進

――緑茶カテキンにはコレステロール吸収抑制と悪玉コレステロール低下作用がある

人生100年時代と言われ、健康で活動できる期間となる健康寿命の延伸が社会課題となる中、伊藤園は今年、その社会課題解決にお茶が果たせる役割が大きいことを伝える啓発活動を本格化している。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子

お茶のリーディングカンパニーとして、お茶そのものの価値を伝えることで市場規模をさらに引き上げてくのが狙いの一つ。

健康志向の高まりにより、お茶のメーン市場である緑茶飲料市場は近年成長を続け、その規模は今年、05年の過去最高4千470億円を上回る勢いとなっている。

毎日飲んで活性酸素除去

本格的啓発活動の第1弾が5月23日に都内で開催された「伊藤園健康フォーラム」。“お茶で人生100年時代を豊かに生きる知恵”と題し、学者・有識者らを招いて基調講演・パネルディスカッションを約3時間にわたり行ったほか、五感を使って体験できるお茶の体験企画コーナーを設けて休憩時間や開会前・閉会後に利用できるようにした。一般参加者の無料聴講を可能とし400人近くが来場した。

東京大学名誉教授の阿部啓子氏
東京大学名誉教授の阿部啓子氏

厚生労働省の18年の発表によると、日本の平均寿命は男女とも過去最高を更新。その一方で、健康寿命と平均寿命の差は男性が約9年間、女性が約12年間伸びていないことが課題となっている。

基調講演とパネルディスカッションでは、お茶の効果・効能だけにとどまらず健康寿命延伸に向けて幅広い知恵が語られた。

東京大学名誉教授・大学院農学生命科学研究科特任教授の阿部啓子氏はフレイル(虚弱)の概念を紹介。フレイルとは、加齢とともに心身の活力が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響で生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態のことをいう。ただし適切な介入と支援で生活機能の維持向上が可能な状態であることも意味する。

健康寿命は、健康から要介護に至らないプレ・フレイル(前虚弱)、フレイルまでを指し、「われわれの健康状態は毎日いつも一定ではない。ひとりひとりによっても差があり、加齢や生活習慣で疾病になってしまう。機能性食品は半健康状態の維持をしていくために重要」と語る。

五感でお茶を体験できるコーナー。“香る”をテーマに、フライパンで茶葉から簡単にほうじ茶を作る体験も
五感でお茶を体験できるコーナー。“香る”をテーマに、フライパンで茶葉から簡単にほうじ茶を作る体験も

代表的な機能性食品に、ポリフェノールを多く含む緑茶・ココア・烏龍茶・紅茶・コーヒーを挙げ、「ポリフェノールは約600万種類あり、摂取すると活性酸素の消去効果がある。ただし、その効果は数時間であるため、食事のときに毎日お茶を飲むのがポイント」と説明する。

その好例として石川県七尾市で07年に臨床調査を開始した「なかじまプロジェクト」を紹介。同プロジェクトで、緑茶を毎日1杯以上飲む群は認知機能低下リスクが約3分の1に減少することが論文発表された。

日本の65歳以上人口は約3千200万人。そのうち認知症患者数は462万人にのぼることから「認知症発症率を1%下げるだけで、わが国の年間介護費用840億円の削減が期待され、世界的にもとても関心を呼んだ研究となった」。

ポリフェノールの中では、摂取するとそのまま排泄される難吸収性ポリフェノール類(プロシアニジン・テアフラビン・アントシアニン)に着目。

「難吸収性ポリフェノール類を飲むとすぐに血圧が低下するほか、交換神経を刺激して腸と脳が直結してさまざまな生理効果を持つというような結果も出てきている」と述べる。(写真下記事続く)

触る”がテーマのコーナー。昔ながらの手揉みによる茶葉加工を披露した
触る”がテーマのコーナー。昔ながらの手揉みによる茶葉加工を披露した
こちらは“聴く”がテーマ。茶室で緑茶を使った10分リセット体験
こちらは“聴く”がテーマ。茶室で緑茶を使った10分リセット体験
視る”をテーマに、氷水出し緑茶の淹れ方が体験できるコーナー
視る”をテーマに、氷水出し緑茶の淹れ方が体験できるコーナー
味わう”がテーマの抹茶コーナーでは、茶筅や抹茶碗で抹茶を点てる体験を用意
味わう”がテーマの抹茶コーナーでは、茶筅や抹茶碗で抹茶を点てる体験を用意
理化学研究所の片岡洋祐氏
理化学研究所の片岡洋祐氏

脳の保護に効果発揮

理化学研究所 生命機能科学研究センター 細胞機能評価研究チーム・チームリーダーの片岡洋祐氏は、緑茶による脳保護効果を説明。

――カテキンやビタミンCによる神経組織の酸化ストレス軽減

――カテキンによる動脈硬化予防

――テアニンによる神経細胞死の抑制

――テアニンによる神経細胞の再生促進

を挙げ「その時々で自分には(カテキンかテアニンの)どちらを必要としているかを考えてもらってお茶を選んでもらいたい」と述べる。

認知症予防は神経細胞の可塑能力をポイントに挙げる。

「脳内の神経細胞(ニューロン)が急激に死ぬことを食い止めるために健康診断を受けて動脈・血圧をチェックしようと医者は言うが、脳科学者からすると、残っている神経細胞のネットワーク機能を促進して可塑能力を十分に発揮させれば認知症は起こらない」と語る。

認知症は、脳内神経機能の“可塑性を上回って”神経機能低下が引き起こされることで発症する。この定義の中で「“可塑性を上回って”ということを理解しておくことが大事で、脳は可塑能力に富んでいる」と指摘する。

認知症予防には脳機能を使い続けることも重要だという。大脳皮質の中で脳科学者が着目しているのが前頭前野で、「加齢によって前頭前野の機能が落ちていくと意欲が落ち性格も変わっていく」と説明する。

前頭前野を健康に保つ方法として片岡氏が推奨するのが料理と会話。「料理はデュアルタスクで意識が多方面に向かう。男の人も料理をすると自然と前頭前野を鍛えられる」とし、会話の好例にはお茶会を挙げた。

お茶会は、年齢や生活背景の異なる人との会話の場所であり、儀式性により高齢者が敬われる社会の維持にもつながり得る。

また茶器の見立てなどで五感が刺激されることも大事な要素で、「五感から入力した情報は神経細胞を強く刺激し記憶に残りやすい」と語る。

奈良女子大学の鷹股亮氏
奈良女子大学の鷹股亮氏

日常の水分補給にも カフェイン、通常量なら利尿心配なし

お茶やコーヒーを飲んでも利尿効果がほとんどないことや、食事のときにお茶や水などを飲む習慣をつけると脱水になりにくいことを紹介するのは、奈良女子大学生活環境科学系生活健康学領域教授の鷹股亮氏。

大量の発汗時に続けて運動やスポーツをするのであればスポーツドリンクが必要だが、日常生活においては「食事のときに糖質もナトリウムも摂取しているので、食事のときにお茶や水を飲む習慣をつけると脱水になりにくい。緑茶約2ℓ分に相当する400㎎のカフェイン量でも利尿効果はないとのデータも出ているうえ、食事にはお茶のほうが合わせやすい」と説明する。

伊藤園中央研究所の衣笠仁所長
伊藤園中央研究所の衣笠仁所長

伊藤園中央研究所所長の衣笠仁氏は、食の“おいしさ”を重要視。「いくら栄養がよくてもおいしくなければ継続できない。おいしい料理を食べたあとは心が豊かになり幸せな気分になり、脳の活性にもいい。日本では、晩ご飯を心許せる人たちとおいしく食べるということを昔からやっていて、このよい習慣も長寿の要因だと思っている」と述べる。

茶研究・原事務所代表の原征彦氏は、30年余に及ぶ膨大な研究により、口臭抑制作用、抗インフルエンザウィルス作用、コレステロール吸収抑制作用、整腸作用など茶カテキン類のさまざまな機能性を紹介した。

茶研究・原事務所代表の原征彦氏
茶研究・原事務所代表の原征彦氏

健康性とおいしさ発信 伊藤園中央研究所

伊藤園の製品開発コンセプトは、

――自然

――健康

――安全

――良いデザイン

――おいしい

の5つ。伊藤園中央研究所(静岡県牧之原市)は、この中の“健康”と“おいしい”について1986年の設立以来、約30年にわたり取り組んでいる。

健康価値の研究では今後の高齢化課題に対処した食生活のあり方の研究を進め、おいしさの研究ではおいしさを科学的に解明することでさまざまな飲用シーンを提案している。

これまでの主な研究成果は、健康軸では、緑茶カテキンのコレステロール吸収抑制とLDL(悪玉)コレステロール低下作用がある。

同研究所では、緑茶に含まれるガレート型カテキンがコレステロールの吸収を抑え、血中LDLコレステロールを低下させることを実証した。

「コレステロールを体内で溶けにくくして体外に排出するメカニズムとなる。ガレート型カテキン高含有飲料を2か月間飲み続けたところ、コレステロールが有意に低下したという結果が得られ、特定保健用食品の緑茶の開発に応用した」と衣笠氏は振り返る。

おいしさ軸では、食事とお茶の関係を科学的に検証。「緑茶と和食の組み合わせはなぜ相性がよいのかというと、お茶の旨み成分であるグルタミン酸と和食の味付けの基礎となる出汁に入っているイノシン酸という核酸が合わさることで、旨みが口の中で増大することが分かってきた」という。

現在進めている研究は、テアニン高含有緑茶抹の認知機能改善効果と抹茶による軽度認知症改善効果の検証の2つ。

緑茶抹による認知機能改善効果では、若干認知症の疑いのある64歳から99歳までの人に、緑茶抹を1年間毎日摂取してもらったところ、認知機能テストの得点が改善した。

海外からの声
海外からの声

現在は「このような結果をもとに、われわれは今、テアニンが多く入っている抹茶で軽度認知症者に改善効果がみられるかという研究をMCBI社さま、島津製作所さまと共同で進めている」。

海外の緑茶事情としては、クリエイティブ・サポート飲料としてIT企業などの創造的な仕事に従事している人に支持されている米国の事例を紹介。シリコンバレーでは、健康経営企業として福利厚生で社員に緑茶ドリンクを無償提供する企業が多数存在するという。

今後は、超高齢化社会を見据え、安全性も含め、健康性とおいしさに関する最新情報を伊藤園から世界に向けて発信していく。