海洋プラごみゼロへ 飲料業界がクリーンアクション

「海ごみゼロウィーク」キックオフイベントに参加した全清飲の堀口会長はじめ理事(代理含む)
「海ごみゼロウィーク」キックオフイベントに参加した全清飲の堀口会長はじめ理事(代理含む)

飲み終わったペットボトル(PET)は、正しい方法で分別回収されれば再びPETあるいは他のプラスチック素材に生まれ変わる――。市場に出回る約60万tのPETは現在、ともに高い回収率(92.2%)とリサイクル率(84.8%)で循環しているが、その規模の大きさから、街中や海辺で空になったPET(空容器)の散乱が目にとまりやすいのも事実。飲料業界を取りまとめる全国清涼飲料連合会(全清飲)では、まずこの事実を受け止め、飲料業界一丸となったクリーンアクションを呼びかけ散乱防止や正しい空PET回収に関する啓発活動を強化している。

課題はPETの回収

PETを再利用したブルーのポロシャツ(背中)
PETを再利用したブルーのポロシャツ(背中)

この啓発強化の動きは海洋プラスチックごみ問題が背景となっている。この問題を受け、一部の事業所などではPET入り飲料を禁止にする動きが出てきているが、事業所で回収されるPETは総じてプラカップや弁当容器などの異物の混入がない良質なもので、高い割合で有効利用されているため、不必要にPETがヤリ玉に挙げられている感が否めない。

問題はポイ捨てやリサイクルボックスへの異物混入にある。

使用済みPETをPETに再生するボトルtoボトルの水平循環型リサイクルは、理論上、何度でもリサイクルできる仕組みだが、異物が混入し回収品の品質が悪くなると、これを阻害するケースが出てくる。

サントリーMONOZUKURIエキスパートの高田宗彦チーフスペシャリストは「不純物が混ざってくると、ボトルtoボトルを続けていくのは難しいと思うが、全PET重量の50%程度であれば新しいPET(バージンPET)も入るので可能となる。不純物の濃度がどこまで上がっていくかも、やってみないと分からない」と述べる。

原田義昭環境大臣(後列左)や、ふじさわ観光親善大使のつるの剛士さん(後列右)らとともに挨拶した堀口英樹会長
原田義昭環境大臣(後列左)や、ふじさわ観光親善大使のつるの剛士さん(後列右)らとともに挨拶した堀口英樹会長

全清飲は30年度までにPETの100%有効利用を目指すことを目標に掲げた「清涼飲料業界プラスチック資源循環宣言」を発表。これを機に多くのメーカーもPET製品に再生PET樹脂を使用することを宣言しているが、その前提として立ちはだかるのが回収となる。

仮に販売量約60万tの50%を再生PET樹脂でまかなうと考えると、歩留まりを含めて30万t以上の原料が必要となる。

現在50万t強が回収されているが、禁輸解禁による海外へ流出や繊維・シートといった他用途との争奪戦の影響で再生PET樹脂用の確保が難しいのが実情となっている。

17年実績では23万t以上が海外に流れ、国内約30万tのうち11万8千tがシートに使われ、PETに充てられた量は繊維と同じ約6万t。この約6万tを30万t以上に引き上げることが求められる。

それには質のよいPET資源を集める必要があり、消費者の捨てる際の意識向上が不可欠となる。

正しい分別方法は、

①キャップを外しラベルも剥がす。
②中をすすぐ。
③横の方向につぶす。
④PETを集める日に出す。

だが、特に屋外のリサイクルボックスは分別のインフラが整っていないこともあり、キャップもラベルも付けたまま捨てられる傾向にあるという。

前出の高田氏は「一番困るのはPET以外のゴミがリサイクルボックスに入れられることで、非常に悪影響を与える」と指摘する。

海ごみゼロウィーク 全清飲と飲料各社が清掃活動

海岸美化活動の様子
海岸美化活動の様子

異物混入は、空容器の品質劣化だけなく、本来入るべき量のPETが入らなくなることで空容器の散乱も招きやすくなる。その結果、自販機オペレーターは空容器回収の訪問要請を受けやすくなり、人手不足でさらなる効率化が求められる中で、自販機オペレーションの阻害要因にもなっている。

全清飲はPET資源循環の啓発活動として、小中高の教育現場に啓発ポスターを配布し、東名阪のエリアにある飲料各社のリサイクルボックスには“リサイクルを目的に空容器だけを集めている”ことを訴求したステッカー計55万枚を順次貼付している。

散乱ごみ対応としては「清涼飲料業界クリーンアクション2019~みんなで海ごみゼロを目指して~」を掲げ、海岸のプラスチックごみ回収活動を開始した。

集められた海ごみ
集められた海ごみ

5月30日の「ごみゼロの日」には、神奈川県藤沢市江の島で開催した環境省と日本財団との共同事業「海ごみゼロウィーク」のキックオフイベントに参加。全清飲の堀口英樹会長はじめ理事(代理含む)らが集まり、全員がPETを再利用したブルーのポロシャツをまとって原田義昭環境大臣らとともにビーチクリーンに取り組んだ。

続いて6月1日には同じく江の島で、全清飲会員社約130人がNPO法人海さくらと日本財団主催の「海岸美化活動(どすこいビーチクリーン)」に参加した。

NPO法人海さくらの古澤純一郎代表は、清掃してもそれ以上に次から次へと海辺へごみが漂着してくることや5㎜以下の微細なマイクロプラスチックの多さを指摘、「湘南海岸には約7~8割が川からごみがやってきており、川のごみは街から、街のごみは人の心が出す。街がきれいにならないと海はきれいにならない」と訴える。

また清掃活動については「決して真面目である必要はなく、楽しく、押しつけがましくなく伝えるのもひとつのやり方」と語る。

家族連れなどで楽しくやることも大切。武蔵川部屋の現役力士との相撲体験も
家族連れなどで楽しくやることも大切。武蔵川部屋の現役力士との相撲体験も

この考え方もあり、6月1日の活動では、家族や同僚らと楽しみながら活動している姿が散見された。海ごみ拾いを終えた後は、武蔵川部屋の現役力士との相撲体験や海の美化を願うハマグリ撒きに興じていた。海にすむ二枚貝は濾過摂食することで海水をきれいにすると言われている。

5月30日から6月8日の「海ごみゼロウィーク」に伴い、メーカー各社も全清飲の活動に加えて個社の清掃活動を強化した。

コカ・コーラシステムでは5月22日から6月4日にかけ、NPO法人グリーンバードとの協業により北は北海道、南は沖縄まで全国10か所以上で清掃を実施し、経営層を含むコカ・コーラシステム従業員約190人が参加した。6月27日には、滋賀県守山市の琵琶湖周辺などでも日本コカ・コーラ社員約400人による清掃・ごみ散乱状況の調査を実施する予定。

海の美化を願うハマグリ撒き。海の二枚貝は濾過摂食することで海水をきれいにするといわれる
海の美化を願うハマグリ撒き。海の二枚貝は濾過摂食することで海水をきれいにするといわれる

江ノ島、大阪府、神戸市、宮城県石巻市などで海岸クリーンアップボランティアに約100人で参加したのはサントリー食品インターナショナル。同社はこのほか、全清飲の活動に賛同、5~6月に500人規模の清掃ボランティアが工場、事業所周辺でのクリーンアップに参加。

キリンビバレッジは5月26日、湘南工場の所在地である神奈川県高座郡寒川町が実施している相模川美化キャンペーンに湘南工場の従業員約50人が参加し、一般参加者への「キリンラブズスポーツ」のサンプリングも行った。滋賀工場でも、滋賀県下で一斉に実施される5月30日の環境美化の日に、滋賀工場の従業員70人が多賀町美化活動として工場周辺の清掃活動を実施した。

アサヒ飲料は、5月30日から6月6日の6日間で約250人の社員が本社近隣で清掃活動を行ったほか、6月1日と2日に兵庫県・家島諸島の西島でごみ拾いを実施した。

伊藤園も5月23日に本社近隣で53人が清掃活動に取り組み、6月20日にも66人が参加して実施予定となっている。

大塚グループは6月8日、大塚グループ社員で構成されるボランティアグループ「大塚製薬環境クラブ」が地元自治会とともに四国の玄関口で、創業の地でもある徳島県・鳴門(千鳥ヶ浜海岸)の清掃活動を行った。グループ15社の社員や家族約150人が参加し、300袋・約1.5tのごみが集められたという。

同グループはそのほか大塚スポーツパークやヴォルティスロード(鳴門市)、今切工業団地周辺でも清掃活動を実施した。

ポッカサッポロフード&ビバレッジは、5月31日から計19か所で社員313人が順次清掃活動を行っており、期限は6月末日を見込んでいる。

日本コカ、日本財団と大規模調査 セブン&アイとリサイクル「見える化」も

PET回収率92.2%に、PETが可燃物など他のゴミと混ざって回収されている分を加えた回収率は、複数の自治体が行ったゴミの実態調査をもとに日本コカ・コーラが推計したところに98%以上となる。

残りの1~2%の未回収分のうちの一部が、河川や海にごみとして流出しているものと考えられるとして、日本コカ・コーラと日本財団は第1ステップとして、その流出経路やメカニズムを把握するための大規模共同調査を開始した。

消費者啓発などを目的に、日本コカ・コーラはセブン&アイホールディングスとリサイクルの「見える化」にも取り組む。セブン―イレブンやイトーヨーカドーなどグの店頭に設置されたPET回収機で集められた容器から再生したPET樹脂を容器に100%使用した機能性表示食品の緑茶「一(はじめ)緑茶 一日一本」を共同で開発した。このPET回収機は6月18日現在で759台あり、これをセブン&アイHDでは今後約10年間継続して年間1千台設置していく。

来店客とともに日常的にリサイクル活動を推進していくのが主な狙い。「ちょっとしたアンテナが立ってもらえればいい。これで社会的課題がすべて解決できるというのは、あまりにも大それた話で、企業姿勢とこれに関して共感してくださる人を目的としている」とセブン―イレブン・ジャパン執行役員商品本部長兼セブン&アイグループ環境部会プラスチック対策チームリーダーは説明する。