新元号「令和」スタート 新たな時代へ期待膨らむ

バブルの絶頂とともに始まった「平成」の時代が30年で幕を閉じ、新時代「令和」が開幕した。30年間を振り返ると世界情勢の変化や相次ぐ天変地異、人口減少とすさまじい超高齢化社会と対峙し、環境変化に対応しながら食品業界は前進してきた。そして迎えた令和。景気後退への懸念が広がる中で、節目を転機に新たな時代への期待が膨らんでいる。

「平成」バブル絶頂と崩壊を経験

バブル絶頂期に始まった平成元年(1989年)。その後、バブル崩壊(1993年)と金融危機(平成9年~10年)により日本経済は深刻な景気後退期に陥った。平成10年(98年)から25年(2013年)は物価が継続的に下落を続け、デフレの状態が長期化。バブルが崩壊し昭和48年(73年)から続いた安定成長期にも終止符が打たれ、失われた20年と呼ばれる低成長期に突入。この間、消費税は3%、5%、8%と段階的に増税され、阪神・淡路大震災、東日本大震災と福島原発事故、リーマンショックの危機も乗り越えてきた。

30年前に始まった平成時代は日本の社会・経済環境が大きく様変わりし、消費形態やライフスタイルが大きく変化する中で食品業界も対応を迫られた。各地に爪痕を残した自然災害、少子化・高齢化に伴う人口減少。市場の成熟・飽和を背景に過当競争と流通の再編が進んだ。製配販三層も需給バランスを崩し、低価格競争と利益なき繁盛を余儀なくされた。オーバーストア、オーバーサプライが色濃くなり、過当競争に拍車がかかったのも平成だった。

課題残る「超高齢化」「人手不足」

目まぐるしく環境が変化した平成だが、今も食品業界が直面する課題は30年前と基本的には大きな変わりはない。それは平成元年の重大ニュースと現在の課題を比較すると明白だ。

平成元年の日本経済はバブル真っただ中だったが、食品業界とはいささか無縁で、昭和天皇崩御により自粛ムードが浸透する中で新元号を迎え、食品業界にとってはさまざまな面でターニングポイントとなった。

4月から施行された「消費税」(3%)は、業界の反発を受けながらスタート。導入までの過程で混乱もあったが、業界のカルテル結成や各社がコンピューター修正など時間と経費をつぎ込んだ結果、導入後は予想以上にスムーズに進んだ。スーパーは駆け込み需要と買い控えを短期間に経験し、導入前の3月は久方ぶりに2ケタ増の売上げを実現したが、4月以降は既存店実績割れが相次ぐも、中間決算では何とか帳尻を合わせた。

今年10月から施行される10%への「消費税増税」。飲食料品は軽減税率の対象であり、前回より引き上げ幅が低いため影響は軽微だと思われていたが、最近の消費の変調をみると油断を許さない状況。前回の消費増税時(14年4月)は四半期ベースで前年割れがなかったことを考えれば明らかに減速。キャッシュレス化やポイント還元制度はいい取り組みだが、小売業は複雑で対応に追われている。

「人手不足」は平成元年にも既に社会問題となっていた。メーカーは受発注に支障をきたし、卸もコンビニの物流に対応できない場面が続出。特にドライバー不足が深刻化し、配送が指定通りにいかず末端対応が問題となり、外食では新規オープンができない店もでた。労働力不足に泣かされた外食業界は、人件費上昇により経営を大きく圧迫した。

「人手不足」は今では一層深刻だ。トラック運転手はピーク時より20万人以上減少し、これが原因で運賃の上昇につながっている。食品の値上げが相次いでいるのも物流コストが一因している。4月1日から改正出入国管理法が施行され、外国人に日本の就労を認め、外国人材活用に門戸を開いた。政府は今年度は最大で4万7千550人、5年間で約34万5千人の外国人労働者の受け入れを見込んでいる。

平成元年は「海外進出」への対応も本番を迎え、その勢いは一段と加速した。メーカーは将来を見据えた国際戦略を急いだ。拠点は東南アジアが中心だが、北米から欧州まで、その範囲は拡大。工場新設だけでなくM&A展開も含め、海外拠点づくりの動きが一段と高まった。

今も「海外進出」の動きは一層拍車がかかっている。内需を支える生産年齢人口の減少と高齢化が進む中で、成長機会を求めて海外市場の取り込みを急いでいる。特に成長著しいアジア市場への参入を目的とした海外展開が増加。海外展開の遅れが目立つ日本は、欧米のグローバル企業と比べると収益性が低いのも事実だ。

平成元年に導入された「酒税法改正」は酒類業界にさまざまな影響を与えた。従価税の撤廃で従量税に一本化されたため高級品は軒並み小売価格が下がり、逆に大衆品は値上がりした。その効果もあって総需要は5~6%伸長した。酒税改正は、一昨年6月にも酒類の過度な安売りを規制する改正酒税法が施行され、小売は酒類を低価格で訴求することが難しくなった。昨年4月にはビール定義も改正され、副原料に果実や香味料が使用できるようになり、多彩なビール開発が進んでいる。

令和時代の幕開け

急がれる人口減少・高齢化対応

5月1日から新時代「令和」が始まった。改元は645年の「大化」以来の248個目だが、天皇退位に伴う改元は初めてと言われている。だが「令和」の時代を迎えても食品業界をめぐる課題は多く、今後は人口減少・高齢化により国内市場は量的に縮小傾向で推移することは間違いない。総人口は現在の1億2千777万人(平成23年9月時点)より2.9%(367万人)減少し、2020年には1億2千410万人となり、65歳以上の割合は23.2%から2020年には29.1%に増加する。

高齢化の中身は、2017年に後期高齢者(75歳以上)が前期高齢者(65歳~74歳)を上回り、2022年には団塊の世代が75歳になり、その後、後期高齢者の割合が急増。このため、自ら買い物や外食に行き、選択する消費者だけでなく、自宅や施設で食品の供給を待つ消費者を念頭に置いた商品開発や商品供給・サービスを構築する必要がある。さらに食品を、単なる「物」の供給ではなく、ライフスタイルの提案としてとらえ、新たな付加価値を生む商品、サービスを開発することが求められている。

人口減少が進む中で、成長機会を海外に求める動きには拍車がかかるはずだ。新興国の経済発展に伴う市場の拡大をビジネスチャンスととらえる向きが強まっている。特に中国、インドなどアジア諸国においては、今後10年間で中・高所得層が急速に増加するため、加工食品の需要増が見込まれており、これらの需要に的確に対応していくことが重要とされている。

食品業界には製造技術やマーケティング、ビジネスモデルなどのあらゆる方面で、既成概念にとらわれず、革新的なイノベーションの可能性を探りながら、国内外で新たな市場を開拓していくことが求められている。

食品メーカーには医食農連携による病気予防食や介護食などの新製品の開発・販売など健康や介護向け市場への対応、アジアなどの中・高所得者層のニーズに合った商品の開発などが有望視されている。流通業でも惣菜や調理食品、ネット販売・宅配・給食などの新たなサービスの提供、地産地消商品の販売促進。外食業には薬膳レストランなどの新業態出店や年代に応じた新メニューの開発、アジアを中心とする海外市場展開が求められている。

人材不足が進む中でITなどを活用した生産・物流体制の見直しによる効率化や競争優位分野への重点化と競争劣位分野からの撤退などによる選択と集中、企業統合・企業間連携による事業規模の拡大を進めることも必要だろう。

大型スーパーは新元号を
掲出し新時代をアピール

祝賀ムードに沸く「令和特需」

「令和」への改元が発表されて以来、小売業界は“さよなら平成セール”や“令和改元セール”などと銘打ち、改元にあわせた記念商品の販売やイベントを開催。また外食チェーンも令和を絡めた特別メニューで客を呼び寄せ、中には名前に「令」や「和」がついていれば半額サービスするユニークな店も出現。令和商戦は知恵比べの様相を呈している。

食品や酒類メーカーも新元号に絡めた商品を相次いで発売している。日本コカ・コーラは令和発表から約90分後という短時間に新元号をラベルに印刷した「コカ・コーラ令和ボトル」2千本を都内で無料配布。伊藤園は5月1日から「お~いお茶」発売30周年記念企画として新時代をテーマに令和をデザインした「お~いお茶 新茶」を数量限定で発売。令和をデザインした350㎖PETボトルも5都道府県の名所で配布。日清食品は「カップヌードル 新元号記念パッケージ」を全国発売。

アサヒビールも「スーパードライ」など5ブランド7品種で改元デザイン商品および改元デザインパックを発売。ネスレ日本は新元号の幕開けを記念する「キットカット祝賀パック」を4月22日から発売した。そのほか「新元号令和純米吟醸原酒」や「令和ワイン」など酒類も賑やかで、「令和紅白饅頭」や「令和バームクーヘン」「令和プリントせんべい」など菓子、スイーツ類を販売する小売店も目立っている。