日本と世界のベストを融合 日本コカ・コーラ カリル・ヨウンス副社長に聞く

好例「コカ・コーラ」福ボトル

――製品戦略の大枠について。

ヨウンス 製品戦略には3つの大きな柱がある。日本のベストと世界のベストを組み合わせたものとして出していくことが1つ。次に、継続してポートフォリオを発展させること。最後は日本の消費者をしっかり理解した製品を発売していくことにある。

1つ目の例として今年のスタートを切ったのが商品軸ではなく、東京・渋谷駅前のスクランブル交差点を中心に行われた年越しイベントへの協賛だった。

グローバルブランドの「コカ・コーラ」を日本最高の場所に持ってきて、日本のベストと世界のベストの組み合わせの象徴となるスタートの切り方となった。

渋谷での年越しイベントへの協賛は今年で3年目になる。今回の新しい試みとして「コカ・コーラ」だけでなく「コカ・コーラ」のオリジナルフェルトハットとLEDカチューシャを無償で配り渋谷のハチ公広場周辺を赤一色に染めた。その模様をLINEで生中継したことで視聴者数も飛躍的に増やすことができた。

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「コカ・コーラ」福ボトルと桜ボトル(左)

しかし、これはあくまで新年のイベントであり、製品展開の最初の例は「コカ・コーラ」福ボトルとなる。福ボトルによって「コカ・コーラ」オリジナルや「コカ・コーラゼロ」の売上げ・数量・買い上げ点数が軒並み増加している。ラベルをはがして裏側にあるQRコードをスマホで読み込むとキャンペーンサイトにアクセスできるようにした。

これは世界的なブランドである「コカ・コーラ」と日本の伝統である “おみくじ”という文化の融合を実際に具現化した好例だと思っている。福ボトルキャンペーンは、クリスマスシーズンに向けて展開しているリボンボトルキャンペーンよりもリピート率が高いという結果が出ている。最初に福ボトルを購入したトライアル数は200万人に上り、大きな成功だと思っている。

「コカ・コーラ」桜ボトルも日本の文化の特徴的なお花見の風習と「コカ・コーラ」という世界的なブランドの融合の例となる。桜ボトルは今年で3年目の展開で実績は年々増加している。

製品展開としては「紅茶花伝クラフティー」も日本と世界の融合となる。「クラフティー」自体はグローバルのコンセプトであり、海外の市場では「Fuze(フューズ)」というブランド名で展開している。これを見た日本のチームが「フューズ」というブランド名ではなく日本の消費者に受け入れてもらうためには「紅茶花伝」のブランドの方が絶対に共感が得られると感じたことから日本オリジナルにカスタマイズした。

昨年の3月12日に「クラフティー贅沢しぼりオレンジティー」、10月15日に「同ピーチティー」を発売し、発売1年間で累計出荷本数が1億本を突破した。日経トレンディ誌でもヒット商品のお墨付きを得ている。今後も日本のベストと世界のベストの融合をわれわれの戦略として続けていく。

製品ポートフォリオの発展 繊細な味覚の消費者を理解

(左から)「ジョージア ジャパン クラフトマン」「綾鷹」「紅茶花伝クラフティー」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
(左から)「ジョージア ジャパン クラフトマン」「綾鷹」「紅茶花伝クラフティー」

――製品ポートフォリオの発展について。

ヨウンス 2つ目の柱である製品ポートフォリオの発展の好例は、昨年の4月に発売した「ジョージア ジャパン クラフトマン」となる。コーヒー飲料市場でショート缶が縮小している中、「ジャパン クラフトマン」はその縮小を補う形で伸長し、コーヒー飲用機会拡大の刺激役になっていると思う。日本のコーヒーの技術である水出し抽出を取り入れ “水出しコーヒー使用”の特徴もうまくアピールできていると思っている。

「ジャパン クラフトマン」の新施策については申し上げられないが、「ブラック」「ラテ」の既存2品でまだまだ狙える可能性があり、この2品をしっかり浸透させていきたい。

「ジョージア」ブランド全体のマーケティングコミュニケーションも進化させた。1つ1つの製品ではなくて、「ジョージア」を1つの大きなブランドとして包括的にコミュニケーションする形へと舵を切った。

レモンサワー専用ブランド「檸檬堂」も如実なポートフォリオ拡充の好例となる。現在、テスト販売を九州で行っており、かなり勇気づけられる結果を得ている。製品の拡充だけではなくて、マーケティングの仕方もどんどん改善していく。

スマートフォンアプリ「Coke ON」と「スマホ自販機」を組み合わせたデジタルプラットフォーム戦略にも取り組んでいる。アプリダウンロード(DL)数は1千300万DL、「スマホ自販機」は31万台へと拡大した。

アプリには新機能を搭載。昨年4月には、目標を設定して歩くとドリンクがもらえる「Coke ON ウォーク」の提供を開始し、現在380万人が使用している。1千300万DLのうちアクティブユーザー数は400万人に上り、アクティブユーザーには製品情報やキャンペーン情報をお伝えしたりして積極的にコミュニケーションしている。

購入データをもとにAIを活用して、購入意向を上げるような「Coke ON」を使ったマーケティングも行っている。昨年11月にはキャッシュレス決済ができる「Coke ON Pay」の提供も開始した。

刷新した「い・ろ・は・す」くだものフレーバーウォーターシリーズ) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
刷新した「い・ろ・は・す」くだものフレーバーウォーターシリーズ)

――3つ目の柱である消費者の理解について。

ヨウンス 日本の消費者をより理解したいというのが常にわれわれの心にあり、日本人の味覚の鋭さには驚いている。例えば、お茶は外国人からすると有糖の商品が多いこともありどれも同じに思えてしまうが、日本では緑茶やその他のお茶など長い伝統と歴史があり文化の1つだと思っている。

「綾鷹」は継続して伸長している。いろいろなデータを見ているが、すべてにおいてプラスの数字が出ている。今年は “お茶にしましょう綾鷹”をキャッチコピーに掲げて展開している。「茶葉のあまみ」「ほうじ茶」「特選茶」とさまざまな違う味を用意している。「茶葉のあまみ」は昨年4月に発売したところ本体とカニバリを起こすことなく純増となり、この年のヒット新商品となった。「ほうじ茶」も純増となった。今年は「茶葉のあまみ」の中味とパッケージを刷新するなどしてさらに拡大していく。

フレーバーウォーターも日本人の味覚にあるものをたくさん出している。3月25日には「い・ろ・は・す」くだものフレーバーウォーターシリーズのパッケージを一新して発売し “想像以上の、くだものっぷり”を謳ったコミュニケーションを展開している。

消費者インサイト調査をしたところ、想像以上に「い・ろ・は・す」フレーバーウォーターの味がおいしいというお声をいただいていることから、土屋太鳳さんと渡辺直美さんを起用したコミュニケーションでは想像以上のフルーツ味を少しドラマチックに演出している。

「い・ろ・は・す」は味のない天然水(プレーン)が5割を占めており、味にフォーカスした後に新しいテーマを考えている。

――そのほかのブランドについて。

ヨウンス ブレンド茶の「爽健美茶」は今年25周年を迎え、引き続き女性をターゲットに伝統の味を守りつつ進化させた。炭酸水の「ザ・タンサン」は昨年、お陰さまで素晴らしい実績となった。しっかりとした2年目を昨対比で迎えるべくパッケージ・中味・コミュニケーションを刷新した。「アクエリアス」は、コミュニケーションとマーケティングで強力な内容のニュースを用意している。

トクホについては、市場が鈍化しているが、これからの可能性をしっかり分析しないといけないし、今まさにそこに取り組んでいるところ。鈍化したのは、消費者が健康になるためにはトクホだけではなく、他の選択肢がいろいろあるということを認識し始めたからだと考えている。トクホを成功させるためにも、健康志向の高い消費者をしっかりと理解する努力が必要だと思う。

――無糖と有糖について。

ヨウンス 無糖がトレンドだが、無糖と有糖の両方に可能性がある。日本の消費者は機会に合わせて上手に商品を選ぶことができると思っている。

――ボトラー社との関係は。

ヨウンス ボトラー社の統合が進んだことで3つのメリットが生じた。革新的なビジネスや新製品に関して早い段階でボトラー社と話し合いができるような体制になった。それから、早い段階から同意が得られ足並みを揃えることができるようになった。クイックレスポンスも得られるようになっている。急に想定外なことが起きても迅速に対応できる体制が整っている。

――新元号や東京オリンピックについて。

ヨウンス 平成最後の年となり、新元号に代わるに当たっては適正な形でお祝いをさせていただくための準備をしている。

東京オリンピックに向けては準備を着々と進めているところで、さまざまな部署から人が集まり、いろいろな角度から定期的に話し合いを行っている。今年もオリンピック関連の面白いことをさせていただきたいと考えている。それが助走となって20年に向けて加速させてピークを開催時にもっていきたい。

ただし、世の中があまり沸き立っていない段階でやりすぎてもいけない。ちょうどいい頃合いの情熱感、エキサイトメント感をもって進めていきたい。日本の誇りを最大限に高める主要なプレイヤーとして頑張っていきたいと考えている。

(本紙 本年度4月3日付記事)