食の情報、ウソ、ホント 科学的思考でニュース吟味を 林原がセミナー

林原は2月23日、岡山市の山陽新聞社さん太ホールで「林原ライフセミナー」を開催した。第2回目となる今回は、科学ジャーナリストの松永和紀氏を講師に招いた「食の安全・健康情報」がテーマ。冒頭、主催者を代表して安場直樹林原社長が登壇。「食品の安全性についていろいろとうたわれているが、この情報は真実なのか嘘なのか、セミナーを通じて吟味する力を養ってください」とあいさつ。セミナーでは松永氏が、世の中にあふれる食に関するニュースから、正しい情報を取捨選択する力“メディアリテラシー”を身に付けるコツを紹介した。

フェイクニュースに惑わされない科学的思考を身に付ける

あいさつする安場直樹社長(林原)

“食品とは?”と考えた時に、世の中の人と科学者の受け止め方に大きな差異がある。一般の人は食に対して基本的に問題がない、残留農薬や添加物さえ取り除けば安全、というイメージを持っている。ところが科学者から見れば、食品はどれもグレーゾーン。いろんなリスクを抱え、いつ黒に変わってもおかしくない。

なぜ科学者がそう考えるかというと、食品にはさまざまな物質が含まれている。栄養素、味や香りの成分、健康効果を期待できる成分が含まれるが、そのほかにも毒性物質、発がん性物質、まだ解明されていない未知の物質。また付着した微生物・カビが作った毒性物質、加熱など製造調理工程でできる物質、残留農薬、食品添加物、放射性物質を含む可能性もある。このうち添加物や残留農薬は一般的に知られているが、それ以外はこの20年間の科学の進歩で解明されたこと。それを知らない多くの一般人が、古い思い込みのままでいる。

例えば、がんと食事の関係。「食品のコゲには発がん性物質がある」と聞いたことがあると思うが、実際に肉や魚、このほかフライドポテトやクッキーなどアミノ酸と糖類を含む食品を高温で調理した場合、また食品を直火調理や燻製した場合に発がん性物質が生成される。

重要なのは、これらの情報をそのまま受け止め食生活から取り除くのではなく、摂取量を守ること。どの物質でも共通して言えることだが、物質の良い効果、悪い影響は食べる量によって大きく変わる。少なければ効かず、とり過ぎると有害になる。身近な例で言えば、食塩やアルコール。一度に多くとると命にかかわるため、私たちが常識の範囲で適量を守っている。自然、天然の毒は日常にある。

では添加物の場合、どのように適量を知ればいいのか。食品添加物は厳しい安全性審査が行われた上で許可されている。内閣府食品安全委員会に所属する専門家が、添加物企業からの提出された資料や臨床試験結果、国内外の研究結果を集めて検討し認可を出す。さらに、厚生労働省が添加物ごとに使い方や使用量などの基準を決めている。事業者はそれを守って使用しているので、私たちが量を気にする必要はない。

添加物は食の安全性を高めるために使われることもある。2012年に白菜の浅漬けが原因でO157食中毒が発生、多くの犠牲者が出る事件があった。土壌には腸管出血性大腸菌が自然に存在するので、洗浄で除去できなかったことが原因。そしてこの事件後、国が漬物の衛生規範を改訂し、加熱殺菌処理か、次亜塩素酸ナトリウム溶液による塩素消毒を義務付けた。

“食品を作る”“食べる”とは、化学的リスク(食品添加物、農薬、汚染物質、天然の有害物質)、生物学的リスク(病原性微生物、ウイルス)、物理的リスク(異物、放射線物質)があるが、食品添加物をうまく使うことでリスク制御できる。“天然・自然は安全、人工合成は悪い”と思い込むのは大きな間違い。

食品添加物が嫌われる理由は、その良さ、正しい情報が一般の人向けに提供されていないから。かつて悪影響を及ぼす添加物が市民運動の働きかけによって使用が禁止され、その後、添加物をめぐる認可制度の改善、安全性評価方法の改善、監視の強化、事業者の法令順守が徹底された。ところが、多くの人は当時の悪いイメージを持ったままにある。

困ったことに、報道関係者にも同様の認識があり、メディアで偏った報道がされている。よく取り上げられているのが、“添加物のせいでがん患者が増えている”というデータ。確かにがん患者数は増加傾向にあるが、一番大きな原因は高齢化によるもの。がんは高齢になるほど、かかる確率が上がる。平均寿命を考慮してデータを見てみると、むしろがんによる死亡数は減少している。

日本の食品報道の問題点の一つは、専門記者を育てる土壌がなく、科学の進歩に記者がついていけてないこと。二つ目は、正しくも印象に残りにくい情報は広がらないこと。

本来、がんを予防するためにはバランスの良い食事を適量とり、適度な運動を続け、適正体重を維持することが大切なのだが、実際にそれでは視聴率、購読は伸びない。だから視聴者、読者の関心をひく新しい話、センセーショナルな部分を誇張した話、分かりやすい二元論がもてはやされる。

一般人が正しい情報を吟味する方法は、情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、他の情報も調べてみること。公的機関が提供する情報は、Webサイトで容易に調べられるが、自治体や保健所などでも聞くことができる。その上で、市民団体からの情報や業者宣伝なども参考程度にみればよい。その情報で誰がもうかるのか、考えてみること。常識力を働かせ、いいかげんな情報に惑わされない力が必要になる。