「岩下の新生姜」V字回復 プロモーション転換で成果

岩下食品の「岩下の新生姜」がV字回復している。2015年から再び伸長し、18年まで4年連続で増加。16~18年は2ケタ増で、前期は20%増と大幅伸長した。オールドファンにはTVCMで知られる商品だが、12年ごろからプロモーション方針を転換。新生姜ミュージアムから発信される話題がSNSで拡散し、テレビなどマスメディアにも取り上げられ、トライアルユーザーが増えている。

同社は1987年に「岩下の新生姜」を発売開始した。台湾のみで栽培される本島姜(ペンタオジャン)を使用し、優しい辛さ、さわやかな香り、シャキシャキとした歯切れの良さが特徴だ。

91年にラジオCM、92年にTVCMを開始し、漬物としては数少ない、一般に広く知られる商品へ成長した。ピーク時には単品で30億円を超え、100億円を超えた同社売上げを牽引した。その後、同商品は成熟期に入り、一時に比べボリュームは落ちた。

漬物市場自体も92年のピーク以降、漸減が続く。消費者の漬物離れに危機感を抱いた同社は12年ごろからプロモーションの方針を転換した。SNSを積極活用する消費者とのコミュニケーションにより、新生姜の新しい楽しみ方を提案している。

15年には栃木市に岩下の新生姜ミュージアムをオープンした。ミュージアムから発信された話題がSNSで拡散され、マスメディアにも取り上げられている。例えば、ツイッターでの「岩下の新生姜」に関するツイート数は14年比で500%以上になった。

また、近年はテレビ露出が相次ぎ、昨年も「ワールドビジネスサテライト」「出没!アド街ック天国」など多くの人気番組で取り上げられた。マスメディアが取り上げることで、流通バイヤーも流行や消費者ニーズを認識し、相乗効果で配荷も広がっている。

「岩下の新生姜」を知らなかった世代にも情報が届くようになり、同社によれば30代以上の50%超が同商品を認知していることが分かった。かつてのTVCMを知らない層にも認識されつつある。

近年の「岩下の新生姜」の販売好調は、プロモーションによるものとみて間違いない。同社の前1月期決算は増収増益で着地し、「岩下の新生姜」が大きく貢献した。この勢いに乗り、同商品は過去最高売上げを上回る新記録達成を目指す。