TPP発効で重要性増す知財権 海外での事業展開に影響も

昨年12月30日にTPP11協定が発効。これに伴い、特許法を含む知的財産権(以下知財権)の改正も行われた。改正事項は「特許権の存続期間の延長制度の新設」「商標の不正使用に対する法的損害賠償制度の導入」。TPP協定が今後の経済連携交渉の基礎にもなり得ることから、知財権への影響についても高い関心が集まっていると言える。

日本弁理士会が実施した年頭の記者説明会では、特許庁法制専門官(当時)としてTPP整備法の企画立案に関与した松田誠司氏が「TPP発効に伴う知財への影響」について説明。改正事項に関する具体的な解説や、改正による国内外への影響などについて述べた。

まず「特許権の存続期間の延長制度の新設」は、審査の遅延により特許権の権利期間が侵食された場合、権利期間の延長を認めるというもの。延長制度は出願から5年経過、または審査請求から3年を超える場合(いずれか遅い日)に認められる。

特許庁の権利化までの標準審査期間は14・1か月(2017年度)と他国に例を見ない早さを誇り、「国内では存続期間が延長されるケースは少ない」(松田氏)とみる。その一方で、国外は先進国であっても2~3年、ASEAN諸国では4~10年と長期化することも多いため、「審査遅延による権利期間の侵食が想定される」(同)。このことからも、「海外での国内企業の知財権保護」という観点から見たTPPの意義は大きいと言える。

次に「商標の不正使用に対する法的損害賠償制度の導入」では、商標の不正使用時に商標権者は商標権の取得維持費用相当額の賠償を求められる点を新たに設けた。この新設規定により、特段の立証負担を要さず一定の損害額を導き出すことができるようになり、「侵害行為があった」という事実をもって損害額を確定することが可能になった。

最も大きなメリットは、簡易迅速な実証ができる点。「損害額を確定するための審議には1年以上有することもある。それよりは差し止めの判決を得ることの方が重要。損害の立証を簡単に終えられるということは、商標権者にとって大きな意味を持つ。これは国内外を問わず同様のことが言える」(同)。

日本は既に高い水準の権利保護を構築・整備し、裁判所を含む運用の保護レベルも高い。TPPの関連法に伴う改正が国内の実務に与える影響は限定的と言えるが、海外においてはTPP加盟国内であっても知財権の保護レベルはさまざまであり、国内企業の知財権の保護、活用をしていく点で期待ができる。これを機に今後、海外での積極的な事業展開を行う上で、「知財権の充実」の重要性がさらに増すことが予想される。