鹿児島県・伊仙町篇⑦
台風24号の爪痕 再起を図る吉玉農園 畑への直播きによる育苗も検討

9月末日、過去最大級の台風24号が徳之島を直撃。徳之島コーヒー生産者会の吉玉誠一代表は「これまでにない強さの台風で恐怖を感じ家の隅っこに集まりじっと我慢していた」とそのときの様子を振り返る。

徳之島の南端にあるコーヒー主要産地の伊仙町では、同町にある試験場の測定で最大瞬間風速67mを観測。吉玉代表が管理するビニールハウスは強風によりビニールが剥がれ約半分のコーヒーの苗が駄目になった。吉玉農園のコーヒーの成木も全体の3割強が被災した。

現在、ビニールハウスは、駆けつけた味の素AGF社員の人的支援で応急処置が施されて再稼働し、吉玉農園では新たに40本の苗木を植えるなどして再起を図っている。

吉玉農園の南側の方角。ここから強風が入ってきた。

吉玉農園は谷間に位置し、背の高い木々が南側をのぞく三方を囲む。北風対策には十分な立地だが、今回は南側からの強風が北側にある木々を直撃した。吉玉農園は北から南へと下るように勾配して広がっているため、北側にある木ほど南風の影響を受けやすい構造になっている。「今回の台風は勉強になった。風の吹く方向がわからず苦労した」という。

生産者会の被災状況も勘案し今後の台風対策として「防風ネットは幼木のうちは有効だが、なるべく自然なもののほうがよさそうだ」との考えを示した。

この列にさらなる新植を予定

その候補として挙げられるの、千年木(せんねんぼく)、カポック、福木(ふくぎ)などの植物。ただし「カポックは横に根が伸びコーヒーの木の生育の邪魔をする。沖縄で多くみられる福木もよいが生育が遅く実が臭いという難点がある」とみている。

育苗については、ビニールハウス(最大800本)を補完するものとして畑への種の直播きを検討。直撒きとは具体的に、有機肥料を撒き徹底的に耕した畑に種を1カ所につき3粒ずつ撒いて覆土し、発芽後半年から1年の間に強い苗だけを残して間引きするやり方となる。

「発芽率は高く、最低2本は発芽する。選ばれた1本は根が真下に伸び、台風に対して強度がでてくる。ポットで育苗すると根はポット内で渦巻状になり、水をかけて伸ばしたりしてから植えるので弱くなってしまう」と説明する。

駆けつけた味の素AGF社員の人的支援で応急処置が施されて再稼働したビニールハウス

苗は鹿児島県立徳之島高校にも提供。同高校農業科の中筋修教論は「今年度まで地域の農業を学習する奄美農業学を開講しコーヒーも題材になった。いただいた種を実験的に播種しビニールハウスで育てている」と語る。

生産者会の方針として、肥料は有機肥料の使用を徹底。これについて吉玉代表は「病害虫の蔓延を防ぐには日本型の有機農法が適している。これが成功すれば、世界のコーヒー生産者に対して発信できる。日本の農業には土に対する思いやりがある」と述べる。

吉玉農園やAGFコーヒー実証農場などでは、味の素ヘルシーサプライの液肥「アミハート」も使用している。

徳之島コーヒー生産者会の活動としては、11月18日に開かれた「第48回天城町農業祭・第31回奄美群島農業祭」に伊仙町代表とするものとして徳之島コーヒーのブースを出展し、そこで会員がストックしていた生豆を焙煎し徳之島コーヒーを1杯300円で販売した。

ビニールハウス内にあるコーヒーの苗
鹿児島県立徳之島高校農業科の中筋修教論
「第48回天城町農業祭・第31回奄美群島農業祭」に出展した徳之島コーヒーのブース
「第48回天城町農業祭・第31回奄美群島農業祭」に出展した徳之島コーヒーのブース
徳之島コーヒーは1杯300円で販売された
徳之島コーヒーは1杯300円で販売された
同農業祭では伊仙町のブースで徳之島コーヒーや徳之島コーヒー支援プロジェクトもアピール
同農業祭では伊仙町のブースで徳之島コーヒーや徳之島コーヒー支援プロジェクトもアピール