コーヒー生産者と消費者をつなぐ 産地プロジェクト多彩に展開 専門商社のワタル

コーヒー生豆の輸入専門商社のワタルは、生産者と消費者の架け橋となることを意識してスペシャルティコーヒーの普及に取り組んでいる。

取材に応じた瀬下直哉営業本部インターネット事業部課長補佐は、スペシャルティコーヒーの買い付け価格が上昇基調にあり、取引先のロースターの多くが規模拡大し過去のビジネスモデルでは成り立たない部分が出てきていることを指摘。その上で「トップクオリティだけでなく、ある程度価格を抑えたものへのニーズにも応えていかないといけない。一方でお取引先さまの商売の感覚に合わせながらも、品質向上に努めコストをかけてつくってくれた生産者にも報いなければならない」と語る。

瀬下課長補佐(ワタル)

生産者・消費者の双方に満足してもらうことに主眼を置き、産地に対しては一部で若年層の農業離れや離農が起きている実情を踏まえて「収益がきちんと確保でき生計が立てられるように、コーヒー豆の品質向上を図り、生産環境を保護してサスティナビリティを実践していくことをサポートしている」。

こうした中、生産者との取り組みの中で生まれた新プロジェクトの1つにコロンビアでの「Pink Bourbon Project(ピンクブルボンプロジェクト)」がある。

コロンビア全土では、約7割がカスティージョと呼ばれるハイブリッド品種(東ティモール産・アラビカとロブスタの交配種)で占められている。同品種は、成長が早く病気耐性もあり生産性に優れる一方で、病気耐性に弱い品種に比べて風味が劣る特性がある。

こうした中で「少しずつではあるが、生産性の高い品種から、風味に優れカップ評価の高い品種への生産にシフトしてもらう」のが同プロジェクトの狙い。

具体的な活動としては、生産者に畑の1区画を使ってピンクブルボン種を植えてもらうことを推奨するとともに、コロンビアの輸出業者Banexport社が苗木の植樹間隔や土壌管理などの技術指導を行っている。

コスタリカでは今年から、生産者自身が自分たちの顔だと象徴するコーヒー(Emblematic Coffee)を伝えるプロジェクトを実施している。

同社は同国に駐在員を派遣し生産者と密にコミュニケーションしていく中で「生産者がコーヒーにどのように向き合っているのか、クオリティだけではなく、生産者の顔が見え、ポリシーが分かるようにしたい。ロースターさまが消費者に丁寧に販売していく際、コーヒーを通じたコミュニケーションがどれだけ図れるかが重要」との気づきを得た。

この生産者の顔が見えるコーヒーを取引先に案内しているほか、オンラインショップでは会員限定で購入・記事縦覧ができるようになっている。

ユニークなフレーバーも取り扱う。ブラジルではスペシャルティコーヒーの生産・輸出を手掛けるCarmo Coffeeが14年から既存のブラジルコーヒーにはとらわれないユニークな風味特性を目指すニューフレーバーズプロジェクトを展開。その第一歩として、スウィートシャワーやダブルパスといったニューフレーバーの開発にこぎ着けた。

スウィートシャワーは、コーヒーチェリー収穫後にシャワーで冷却し糖の分解を抑えることで通常よりも糖度の高い状態で乾燥させる精製方法となる。

ロースターや自家焙煎店など顧客の変化については「コーヒーの品質や多様性に非常に共感していただいているお客さまが多い」と述べる。特にプロジェクトオリジンやオークションロットなどのトップクオリティのコーヒーについては「品質面だけでなく店舗のこだわりをアピールする大きなアドバンテージになっていると考える」。

今後の課題としては、カフェ業態の新規出店が一巡する中での需要の掘り起こしとスペシャルティコーヒーの買い付け価格の上昇への対応が挙げられる。

「カップオブエクセレンスが始まった当初の落札価格は1ポンド当たり3㌦に満たなかったのが現在では8㌦、10㌦を付けるものがある。この期間、ロースター様の規模感も大きくなり、当時のコスト感覚では卸のビジネスとの不一致が出てきた。そのため、一定のクオリティを担保しながらも、よりリーズナブルなコーヒーへのニーズも高まっている。プロジェクトやトップクオリティへの理解と価値の共有、生産者の収益の確保も考える一方でバランス感覚を持って臨まないといけない」という。