カリフォルニア・アーモンド 大地の恵みをたずねて㊥ 10万人の雇用支える産業持続へたゆまぬ努力

バラ科の植物の一種で、モモと同一の祖先を持つアーモンド。現在のイランを中心とした西アジア地域では、種の中心部にある仁が紀元前から貴重な栄養源として食されていた。その後に地中海沿岸域へと栽培が広がり、さまざまな菓子や料理に使われるようになる。

スペインの宣教師によって新大陸にもたらされたのは18世紀半ば。なかでも米西海岸のカリフォルニアで栽培が広がり、20世紀に入ってからは一大産業として発展を遂げた。

「アーモンドの栽培には、高温で乾燥した夏と、冷涼で多雨の冬という特色を持つ地中海性気候が欠かせない。世界でも5地域ほどに限られる数少ない土地の一つが、カリフォルニアだった」(カリフォルニア・アーモンド協会 グローバルマーケティング・シニアディレクター エミリー・フライシュマン氏)。

エミリー・フライシュマン氏(カリフォルニア・アーモンド協会)

カリフォルニア州は南北約800㎞。州中央部に位置するセントラルバレーと呼ばれる地域で、世界のアーモンドの80%を産出する。州の農産物の中でも1位の生産量を誇る代表的な産業として10万人の雇用を生み出し、米国経済への貢献は約110億㌦にのぼる。

業界は約6千800の生産者と101の加工業者からなり、生産者の9割は家族経営。7割は100エーカー以下の小規模農園だが、全農園の合計では100万エーカー超におよぶ。

カリフォルニア・アーモンド協会は、1950年に設立された準政府機関。会員はすべてボランティアで、生産者からの出資で運営。マーケティングのほか、研究活動や産業育成が主な業務だ。

「逆にわれわれが関与しないのは、価格に携わる活動と、特定の生産者や業者と結びついた活動だ」(フライシュマン氏)といい、公正な運営が担保されていることによって組織への信頼を獲得しているという。

ダニエラ・ヴェーンストラ氏(カリフォルニア・アーモンド協会)
ダニエラ・ヴェーンストラ氏(カリフォルニア・アーモンド協会)

マーケティング関係の業務に15年ほど従事するフライシュマン氏だが、6年前にカリフォルニアに移り協会の仕事に携わるまでは、アーモンドが木の実であることすら知らなかったという。「この仕事はすべての面で素晴らしく、今では最も気に入っている」と話す。

アーモンド産業は自然資源に対しても大きな責任を負っていることから、生産者への教育、持続的な農業といった未来を見据えた活動も実施。とりわけ重点を置くのが、アーモンド栽培に不可欠な「水」と「蜂」だ。

干ばつによる水不足が常に課題となってきたカリフォルニアでは、農業用水をより有効に活用する技術が発達している。

協会でサスティナビリティーに関する広報を担当するダニエラ・ヴェーンストラ氏は、自身もアーモンド農家の出身。同氏によれば「水はカリフォルニアにとって本当に深刻な問題。以前は農園全体に潅漑していたが、より効率的に使うために80年代から小さな区画での潅漑が始まった」といい、木の周辺のみ必要最小限の給水をする方式が現在では主流。地上水だけでなく地下水の利用にも州当局の規制が強まるなか、協会では対応方法を研究。生産者がとれる対策を紹介している。

アーモンドの実
アーモンドの実

また春の開花期には、ミツバチによる受粉が欠かせない。生産者は養蜂業者からミツバチの供給を受けている。

「良いミツバチがいることが良いアーモンドにつながるので、95年からミツバチの健康についても研究を続けている。生産者には、アーモンドだけでなくさまざまな種類の花を植えるなど、有効な対策を紹介している」(ヴェーンストラ氏)。

殻などの副産物の有効利用による廃棄物ゼロへの取り組みとも併せて、サスティナビリティーは業界にとって今後も最重要テーマの一つだ。(つづく)