鹿児島県・伊仙町篇⑤
コーヒーの花・果実・葉にも可能性 未来創生課が副産物支援

徳之島コーヒー生産支援プロジェクト追い風か

徳之島コーヒーには、コーヒー豆だけなくコーヒーの花、果実、葉を原料とする副産物でも脚光を浴びる可能性がある。伊仙町役場の未来創生課がコーヒー関連で支援するのは、徳之島島内宮出珈琲園でつくられるコーヒー副産物。6月から同園の「珈琲葉茶」「珈琲花茶」「珈琲果実茶」を伊仙町・ふるさと納税のお礼品として採用している。

農園主の宮出博史さんは、大阪でコーヒーの店舗を構えながら07年から徳之島でコーヒーの栽培を手掛け、17年に300本から初収穫。同時にコーヒー副産物の研究を進め商品化へとこぎ着け、未来創生課が募集をかけている地域おこし協力隊に申し込み、移住に至ったという。

地域おこし協力隊とは、Iターン者の地域への定住・定着を図る制度。都市部から過疎地域や条件不利地域(地方)に住民票を移動し、生活の拠点を移した者を地方公共団体(町)が地域おこし協力隊員として委嘱し、隊員は一定期間地域に居住して地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援や農林水産業に従事する。

「宮出さんとは私が経済課に在籍していた時にコーヒーを通じて知り合い、今回の身の振り方を決断されるまでに10年余りかかった。カフェとの二足の草鞋ではなく、コーヒー栽培に本腰を入れる必要性を感じたこと、またコーヒー副産物のお茶に大きな可能性を見いだしたことが移住の決め手になったと聞いている」と語るのは未来創生課の松岡由紀主査。

「AGF®コーヒー実証農場」(6月撮影)

昨年は、伊仙町、徳之島コーヒー生産者会、丸紅との4者で徳之島コーヒー生産支援プロジェクトが発足され、今年4月には伊仙町の「AGF®コーヒー実証農場」に100本の苗木が植えられた。

同プロジェクトでは100kg弱の年間生産量を5年後に1~2tに拡大していく目標を掲げており、これが達成できれば副産物利用の可能性も広がりそうだ。

時代の急激な変化への対応と、縦割り行政の解消を目的に設立された未来創生課では、産業にとどまらず健康・福祉・観光など町政全般の計画立案を担い、新規事業の創出や、移住者のサポートにも携わっている。

農業次世代人材の育成では、次世代を担う農業者となることを志向する者に最長5年間、年間最大150万円を交付する制度が設けられており、初期投資がかかる新規就農者への大きなバックアップとなっている。

ただし一般的な移住に関しては、「同じ移住者としての経験則によると、役場を頼ったり、他の地域と条件を比較して移住を考える人はまず残らない」と前出の松岡主査はいう。

伊仙町が求める移住者像は、宮出さんのようなスキルを持ち、島で生活する方法を自ら編み出して実践する人。移住者の離反が繰り返されると「そもそも根付いていた“何かしてあげたい”という島民性・地域性まで損ないかねない」とも語る。他町の事例では、集落に溶け込めない移住者だけが集まったり、地元に馴染む努力もなく、従来ある地域コミュニティー崩壊の危機に瀕しているところもあるという。

嘉納寿成主事は、新たにコーヒーの生産に携わってみたいという人に対して兼業を推奨。「コーヒーだけで生計を立てるのは当面は難しい。何かしらの仕事をしながらコーヒーを栽培するのが一番のやり方。少しずつコーヒー畑のキャパシティーを伸ばし、タイミングをみて本腰を入れるというやり方も考えられる」と説明する。