北海道地震 想定外のブラックアウトがサプライチェーン直撃

6日未明、北海道胆振(いぶり)地方を震源に発生した北海道胆振東部地震は、北海道管内のほぼすべての電力供給がストップするブラックアウトを引き起こし、食品メーカーや流通を直撃した。食品新聞社調べ(7日時点)では、多くの食品メーカーや流通が地震の影響を受けたが、倉庫内や店舗での荷崩れといった地震そのものに伴う被害を除けば、そのほとんどは電力供給がストップしたことによるもの。

地震の規模や揺れの強さの割に、建屋や生産設備への被害は少なく、道内に多くの工場を持つ大手乳業メーカー(明治、森永乳業、雪印メグミルク)でも電力の供給停止が最大の課題となった。大手メーカーの道内工場は、乳業など一部カテゴリーを除き、道内向け商品の生産が中心となっているケースが多いため、現時点で加工食品については大きな影響はないものとみられるが、乳製品や、道内メーカーが製造し、内地で販売するチルド食品などの供給には大きな影響が出そう。影響の大きさは、電力の供給再開、生産再開時期など時間との勝負という状況だ。

食品卸 入出荷が一時停止 物流への影響注視

卸業界では地震発生直後の北海道ほぼ全域にわたる大規模停電の影響でシステム・物流機能が一時停止。6日は非常用電源を持つ少数のセンターを除き、入出荷業務が全くできない状態に陥った。

ただし、三菱食品、国分北海道など主要大手卸の物流拠点に大きな物理的損害はなく、電力が段階的に復旧した7日午前中以降、各センターが順次出荷業務を再開させている。主要仕入先メーカーの道内工場にも重大な設備被害はなく、電力さえ確保できれば卸への納品を速やかに再開できる見通し。

しかし、大消費地の札幌・函館周辺では7日時点で停電が続いており、業務を再開できないセンターもある。国分北海道は7日までにほとんどのセンターを再稼働させたが、同日午後4時現在、函館・札幌ならびに道内最大規模の恵庭センターが停止を余儀なくされている。札幌・千歳両市に隣接する恵庭市には食品物流拠点が集中しており、電力復旧の遅れによって札幌向けの商品供給に支障を来す恐れがある。

また、非食品を含む道内工場および物流拠点が停止した6日はトラック輸送も麻痺しており、7日以降の生産・出荷再開によって道路交通網にどんな影響が出るかが見通せない状況だ。大動脈である道央道の通行止めは7日午後2時までに解除されたが、スーパーなどの営業再開が相次ぐ中、メーカー・卸は一般道の渋滞等による物流への今後の影響を慎重に分析している。

メーカー各社の状況

電力供給停止という事態を受け、大手乳業メーカーの北海道内の工場は一時的に全工場が稼働を停止。これに伴い、酪農家からの生乳の受け入れも停止している。

7日午後3時段階では、雪印メグミルクの札幌工場(札幌市)、興部工場(紋別郡興部町)、明治の旭川工場(旭川市)が復電したが、森永乳業は全工場で復電していないとしている。

3社とも現時点で生産再開の見通しは立たないが、工場建屋、生産設備に甚大な被害は出ていない。復電次第、生産再開の動きに取りかかるものとみられるが、問題は原料となる生乳の供給。

今夏の猛暑を受け、生乳生産の需給はタイトになっていたが、そうした中で発生した今回の地震。復電が長引けば長引くほど酪農家の負担が増加、乳牛の健康問題にもつながりかねない状況となっている。

「生乳を捨てなければならない酪農家の無念さや虚しさは弁償されることはない」(酪農家)というように、酪農家の精神的なダメージは少なくない。酪農乳業界に加え、行政を含めた物心両面での幅広い支援が求められそうだ。

日清食品ホールディングスの子会社・札幌日清千歳工場(千歳市)は復電しておらず、工場の稼働は停止している。ただ、建屋、生産設備に損壊はないことから、復電を待ち、生産再開に向けた準備にかかる見通し。

東洋水産北海道事業部北海道工場、北海道冷蔵庫(小樽市)はともに、物的人的被害はなかったが、電力供給がストップしているため、生産停止に追い込まれている。

同工場生産品は道内向けが中心だが、ハム・ソーセージやチルド麺の一部は同工場から全国に供給している。当面は在庫で対応するものの、復電までの時間次第では賞味期限の短いチルド麺などの供給に影響が出る可能性もある。(いずれも7日午後3時時点)

ケンコーマヨネーズは、震源から50kmほど離れた白老町に最新鋭の工場を建て、この4月に稼働を始めたばかり。建物や設備に被害はなく、停電は6日のみで7日朝には通電している。製造品目は道内に向けた日配のフレッシュ惣菜やロングライフサラダ、冷凍品など約60品。

再開に向け動いているが、道内得意先の詳しい状況が分からないため、ラインが動き始めても日配品再開のめどは立たない。本州向け冷凍品などから生産を始める予定。

アイスクリームはショーケース内の商品は全滅。営業冷蔵庫は停電になっても、扉を締め切っておけば4~5日程度は庫内温度を保てる。小売からの発注もないため開ける必要がなく、今は通電の再開をひたすら待っている状態。棚からの落下など破損の程度は、通電を待ってから確認することになる。

「ポテトサラダ」などチルド包装惣菜を生産するヤマザキ旭川工場は、6日は停電で停止した。設備に問題はなく、通電後の7日から操業を再開した。地震直後から道内のCVSなどでは品切れとなり、営業を再開した店舗からのオーダーが急増している状況。(7日午後3時時点)

防災食 必要性浮き彫りに

今回の北海道胆振東部地震は、防災食、備蓄食の必要性も浮き彫りにした。9月1日の「防災の日」を前後して全国の自治体は防災訓練を行ったばかりで、よもや数日後には「訓練」どころか「実践」の必要に迫られている。

道内61市町村の約770か所の避難所には6千人から7千人が避難していると言われ、各自で持ち寄った食料により不自由な避難生活を送っている。震災3日目に入り自治体備蓄も底をつき、災害協定を結んでいるスーパーやコンビニエンスストアに食料供給を要請。パンや弁当、おにぎり、ミネラルウォーターなどが配られているが、長期化が予想される避難所生活にはこれだけでは厳しい。

今回の地震は、発電と充電の供給バランスが崩れるブラックアウトという現象により停電が新たな問題として浮上。防災食の在り方にも問題を投げかけている。