牡蠣養殖に豪州の技術を 殻付きの市場拡大へ SEAPAジャパン

多くの第一次産業にとって後継者不足は深刻な問題だ。海や山で自然を相手にした重労働に従事するも、高齢化が進み作業はままならない。跡を継ぐ者がいなければ、産業自体の存続が危うくなる。牡蠣の養殖業も同様の悩みを抱えている。

こうした中、オーストラリアの先進的な養殖技術を日本に導入し、課題解決につなげようと、養殖資材を製造するオーストラリアのSEAPAが今年5月、日本法人を設立した。効率的で品質の安定した牡蠣の養殖法を提案するとともに、現在、日本で主流のむき身に替わり殻付き牡蠣の市場開拓を視野に入れる。日本法人の吉本剛宏社長に話を聞いた。

――日本法人を設立したきっかけを教えてください。

吉本 2011年の東日本大震災の際、牡蠣の産地である宮城県が甚大な被害を受けた。その復興に助力した国の一つがオーストラリアだった。当時、私はオーストラリア総領事館で主席商務官を務めており、復興に貢献するプロジェクトを企画し取り組んでいた。単に元の状態に戻すのではなく、オーストラリアの技術を注入し、震災以前よりも強い産業に育てる手伝いをするのが目的だった。

宮城の産地を実際に訪れて分かったのは、生産者の多くは高齢であるにもかかわらず作業が重労働だということ。そしてそれは宮城だけでなく、日本全国に共通する問題でもあった。きっかけは東北の復興だったが、これが成功すれば、日本全体の牡蠣産業の活性化が図られるのではないかと考えた。

吉本剛宏社長(SEAPA)
吉本剛宏社長(SEAPA)
――日本とオーストラリアの牡蠣産業の違いは。

吉本 日本では主にむき身が流通しているが、生産者にとっては作業に人手が必要なのに単価は低い。一方、オーストラリアではむき身で出荷されることはほとんどなく、殻付きのまま出荷される。

――養殖方法はどう異なりますか。

吉本 日本は垂下式や延縄式と言われるもので、量はたくさんできるが個体の品質にばらつきがある。むき身の生産には向いているが、殻付きで出荷できるものが安定的に得られない。

一方、オーストラリアの養殖はシングルシード方法と呼ばれるもので、バスケットの中で回転させながら育てるため、身がしっかりと入り形も良い。仮にバスケットに50個あれば、50個とも工業用品のように同じ形に育てることが可能で、殻付きの品質と生産効率を向上させることができる。

また、生産単位をプラスチック製のバスケットを使いモジュール化するため、管理や作業が容易になる。同時に、生産工程を創意工夫しやすく独自の商品を作ることができる。

――現状、国内ではむき身が主流ということですが、殻付き市場の将来性は?

吉本 殻付きはむき身に比べ取引価格が高く、今後の需要拡大が期待される。日本国内ではオイスターバーの店舗数の増加は落ち着いたものの、一般の居酒屋やイタリア料理店などで殻付きが定着し広がりを見せている。

さらに、牡蠣にストレスを与えることで身が強くなるため、消費地が遠い輸出に向いたものができる。特にシングルシードによってもたらされる安定生産と均一化は、輸出には絶対条件である。また、最近はネットを通した直売に意欲的な生産者も増えている。

――シングルシードを導入している生産者は増えていますか。

吉本 既に量産に成功している生産者も増えており、トライアル段階の生産者はさらに多い。5月末に設立記念のセミナーを開いたところ、北海道から沖縄まで多くの人に来てもらえた。特に若い生産者は意欲的だ。資材の販売も好スタートを切っており、日本市場の可能性を強く感じている。生産者とともに、牡蠣養殖産業の強化に貢献していく覚悟だ。