サントリー「ボス」半歩先の戦略 「容器」起点の発想脱し「価値」へ視点転換

コーヒー飲料市場は、飲み切りタイプのショート缶から小型のペットボトル(PET)などの再栓可能な容器へのシフトが加速している――。

このような市場のとらえ方をやめて、容器起点から消費者価値起点に転換して市場をとらえ直す方針を固めたのはサントリー食品インターナショナルの「ボス」。

「ボス」はこれまで、ショート缶でヘビーユーザーとの絆を深める“深化”と、再栓可能な容器で女性や若年層にアプローチする“進化”の両輪で容器別に戦略を遂行してきたが、これを改める。

7月30日、発表した柳井慎一郎常務執行役員ジャパン事業本部ブランド開発第二事業部長は「“深化”と“進化”の戦略から一歩進めて“つかの間の一服”と“ちびだら飲み”の双方のバリューを推進していく」と語る。

“深化”を“つかの間の一服”に、“進化”を“ちびだら飲み”に置き換えただけのように思われるが、考え方をどこに置くかが重要なのだという。

「容器起点だとショート缶のお客さまの気持ちが後回しになる。戦略が少しビジネスライクになり、実は隠されている“絶対に減らないであろうニーズ”が見落とされがちになる。物事の考える順番は結構大事で、頭の切り替えをしながらやらないと教科書通りの仕事しかできなくなる」と説明する。

この考えの下、下期(7―12月)はモノづくりの強化を図る。新・焙煎技術を取り入れたショート缶の新商品を投入するほか、破竹の勢いの小型PETコーヒー「クラフトボス」でホット商品3品を新発売するなどして年間1億ケースの大台突破を目指していく。

柳井慎一郎氏(サントリー食品インターナショナル)
柳井慎一郎氏(サントリー食品インターナショナル)

新・焙煎技術は、7月に本格稼働したサントリーコーヒーロースタリー海老名工場の高機能焙煎機によって実現。高機能焙煎機の最大の特徴は、ローストファンで熱風の量や焙煎温度を自由自在に制御できる点にあり、これにより実現可能な香味が従来の3倍の30万通りになる。

サントリーコーヒーロースタリー社の三橋守男品質開発戦略部長は「われわれは焙煎を単なる作業・工程ととらえておらず、焙煎こそ新しい香味創造に最も有効な技術であり、そこには限界がなく原料豆のポテンシャルを超えていける」と胸を張る。

高機能焙煎機が稼働

新・焙煎技術は今後、「ボス」のフルラインアップに導入される。「今後についてはショート缶に限らずPETコーヒーやボトル缶を含めてさまざまなものに新しい焙煎の技術が生かされる」(柳井部長)という。

“つかの間の一服”バリューについては「ショート缶が衰退するというとらえ方ではなく、どのようなユーザーやバリューが残存するのかをしっかり考えて異なるアプローチを考えていく」。

一方、“ちびだら飲み”バリューについては「しっかりした味わいを好むお客さまもいれば『クラフトボス』のようにゴクゴク爽快に飲みたいニーズもあり、再栓性でまとめるつもりはない。ボトル缶からPETへの単なる移行ではなく、味わいと容量のバランスで再栓容器を再編成していく」。

「ボス」の上期(1―6月)の販売実績は「クラフトボス」が牽引し市場を大きく上回る前年同期比9%増になった。

「クラフトボス」の直近については「3品目の『ブラウン』は既存品とカニバリを起こさずに推移。また、PETコーヒー市場が大きくなっていることから他社の影響を思っていたよりも受けなかった。お茶や水ほどではないが、通常の缶コーヒーと比べて中味の飲みやすさもあり気温の高まりと相関している」と述べる。