軽減税率対応問題 業務負荷拡大の懸念 小売は税率別発注を推奨か

19年10月に導入が予定されている消費税軽減税率制度への事業者間取引の対応をめぐり、新たな課題が浮上している。現在、一部の小売団体は納入業者への発注を税率ごとに分ける方向で調整を進めているが、この手法でスーパーなどが足並みを揃えた場合、発注データ件数が大幅に増加し、売り手・買い手双方の業務負荷が高まる恐れがある。背景には業界標準EDIシステムの流通BMSが複数税率混在型の電子発注伝票の作成・送信に対応していないという問題がある。軽減税率制度の研究で先行する日本加工食品卸協会(日食協)は、各小売団体と連携して対応を検討する。

流通BMSは07年に実用化された小売―納入業者間の標準EDIシステム。食品スーパーなどの小売業はJ手順による従来型EDIからの切り替えを急いでいる状況だ。導入小売企業数は既に182社(6月1日現在、社名公開企業のみ)に広がっているが、来年の軽減税率制度の開始に向けて爆発的な普及が見込まれている。

07年の実用化当初から発注・請求などの電子伝票書式に税率区分項目を設けているために、軽減税率導入後の23年10月に義務化されるインボイス制度(適格請求書等保存方式)にもスムーズに対応できるからだ。

ただし、現在の流通BMSは発注データを税率ごとに分けて作成・送信する運用ルールとなっており、税率の異なるさまざまな商品をまとめて発注できない。小売団体が税率別発注への一本化を検討しているのも、このことに起因する。

この税率別発注が食品業界の商慣行として定着した場合、小売と納入業者の受発注処理業務は税率区分のない現方式に比べ煩雑化する。食品は軽減税率(8%)の対象だが、カテゴリーによっては標準税率(10%)の商品がかなり多く混在してくるからだ。

例えば、みりんは調味料売場の商品だが、酒類に区分されるため標準税率が適用される。一方、加塩によって不可飲処置を施したみりん風調味料は軽減税率だ。ドリンク剤も医薬部外品のリポビタンD(標準)と清涼飲料水のオロナミンC(軽減)では税率が異なる。ほとんどが軽減税率の菓子の中でも、価額に占める食品の割合が3分の2未満の玩具菓子などは標準税率となる。

日食協 混乱回避へ調整

こうした複雑な税率規定と品揃えの中で食品スーパーなどが税率別発注を採用すれば、流通全体の発注データ件数(電子発注伝票枚数)が大幅に増加し、業務効率の引き下げ要因になりかねない。

日食協の軽減税率対応システム専門部会(大久保敏男座長・三菱食品情報システム本部本部長付)はこの問題を重視し、各小売団体と連携して最適化の方向を探る方針だ。EDIで税率混在型の発注に対応できるよう、流通BMSの維持管理団体(流通BMS協議会)に変更案の提出を検討しているほか、現方式と同様に発注データの税率区分項目を省略し、軽減税率導入後も混在型の運用をスムーズに続けていく案も整理する。

同専門部会は今年3月に軽減税率制度の導入に伴う事業者間取引の課題と対応の在り方をまとめた手引書(「消費税軽減税率対応 企業間取引の手引き第1版」)を協会ホームページで公開。その後交付された関連政省令などを踏まえ、8月中にも最新情報を盛り込んだ第2版を発表予定だ。

軽減税率制度ではインボイス交付の在り方を中心に事業者間取引にさまざまな課題が発生するが、混乱防止に向けた業界レベルの対応は遅れており、この分野の研究と情報公開で先行する日食協専門部会への注目度が急速に高まっている。