鹿児島県・伊仙町篇①
徳之島コーヒープロジェクト

徳之島コーヒー始動 6次産業化の夢への第一歩

同プロジェクトは、徳之島コーヒーが次世代につながる事業へと発展していくことを目的に、伊仙町、徳之島コーヒー生産者会、味の素AGF社、丸紅の4者が手を携えてコーヒーの生産拡大に取り組む活動。年間生産量は現在、島内にある1軒のカフェ「スマイル」が定番メニューとして提供可能な100㎏弱で、当面はこれを1tに引き上げていく。

徳之島コーヒーの第一人者は、約35年前から伊仙町で幾多の失敗と自然の脅威にさらされながらも生産を続けている徳之島コーヒー生産者会の吉玉誠一代表(72歳)(写真2)。奄美糖業の歴史(参考)を踏まえ「サトウキビにおんぶに抱っこになるのではなく、島の方針として自助努力でできるものを考えていたときに、私の好きなコーヒーとマッチングさせたら面白いと考えた」と語った。

先駆者・吉玉代表のコーヒーづくり 来年は裏作 カットバックに挑む

写真②(徳之島コーヒー生産者会 吉玉誠一代表)
写真②(徳之島コーヒー生産者会 吉玉誠一代表)

徳之島コーヒーの先駆である徳之島コーヒー吉玉農園(写真3)は、北風が直撃しにくい谷間の、南側に開けた場所にある。広さは約14a(1千400㎡)で、約230本のコーヒーの木が栽培されている。ここを吉玉代表が一人で管理し朝からの作業を日課としている。

徳之島は、伊仙町・徳之島町・天城町の3町で構成され、吉玉農園以外にも比較的新規のコーヒー畑がいくつか点在している。

吉玉代表は島全体でコーヒー畑の拡大余地があることを指摘し「南斜面の土地が多い伊仙町が一番適しているが、天城町の南西斜面、徳之島町の北東斜面も適している。南傾斜が適しているのは北風を受けにくいからで、防風対策さえできれば北部でもできないことはない」と説明した。

コーヒーの収穫期は4~5月の間で、吉玉農園では今年、172本からコーヒーチェリー(コーヒーの実)を収穫した。

来年については「今年が多く実ったので来年は裏作を迎えるためしんどいかもしれない。実が成った部分は次の年には成らない。ただし、減り方は品種によって若干違いがあり半減とまでとはならず今年の60~70%程度と見込んでいる」。

5年以上の木が多いことから、吉玉農園では現在、カットバック(写真4)という手法に取り組んでいる。「伸びきった幹を切って新しい幹を出す時期に入った。私も初めての体験であり、試行錯誤しながら行っている。今年中に3分の1を手掛け、3年間かけて全面的にカットバックを行っていく」という。 → (写真下記事続く)

写真③(徳之島コーヒー吉玉農園)
写真③(徳之島コーヒー吉玉農園)
写真④(カットバック)
写真④(カットバック)
写真⑤(モカのコーヒーチェリー)
写真⑤(モカのコーヒーチェリー)

栽培されるコーヒーの品種は赤い実のモカ種(写真5)と黄色い実をつけるブルボン種(写真6)の主に2種類。中にはブラジルでは見られなくなったと言われる希少品種のブラジルティピカ種もある。

吉玉代表は、徳之島コーヒー生産支援プロジェクト発足を機に昨年竣工したビニールハウス(写真7)も管理。ここでは、育苗(写真8)と果肉除去した豆の乾燥(写真9)を行い、成長した苗を徳之島コーヒー生産者会のメンバーに提供している。

育苗中のポットは、種植えから行うもの(写真10)と、農園で自生している苗(写真11)を引き抜いたものの2種類がある。後者の場合は「引き抜いたものは根っこが弱く葉の大きさに対して根が少ないため、葉の3分の1程度をカットする(写真12)。新しい葉が出てくるようになると、根が活着して養分を吸い上げるようになる」と述べた。 → (写真下記事続く)

写真⑥(ブルボン種)
写真⑦(ビニールハウス)
写真⑦(ビニールハウス)
写真⑧(育苗)
写真⑧(育苗)
写真⑨(乾燥)
写真⑨(乾燥)
写真⑩
写真⑩
写真⑪
写真⑫(カットした葉)
写真⑫(カットした葉)
写真⑬
写真⑬

2種類ともポットから2本の枝が上下で交差するように生え(写真13)、葉があらゆる方角から陽を受けられるようになるとコーヒー畑への本植が可能となる。

本植後は「植え替えたばかりで根が弱いので、周りに支柱を立てキャップをかぶせ、暑くなったらキャップ下げ、寒くなったらキャップを上げるというように細かい作業がたくさんある」。

本植から収穫可能な成木になるまで5年を要することから、徳之島コーヒー生産支援プロジェクトでは5年後に1tへの生産拡大を当面の目標に掲げている。 → (写真下記事続く)

名産・純黒糖に合う徳之島コーヒー 唯一飲める場所 犬田布岬のカフェ

伊仙町は長寿日本一の町であり、その要因の1つに考えられるのが硬水。採水地点によっては、フランスの「エビアン」と同レベルの290mg/Lの硬度の水が採水できるという。

珊瑚礁が隆起してできた地質の中を通り抜け、カルシウムとマグネシウムを大量に含む水は、生活水として飲まれているほか、料理や作物の栽培としても使われている。これにより、伊仙町を含め徳之島全般の農作物は、ミネラルが比較的多く含まれているという。

一般的にコーヒーをドリップ抽出するには軟水が適しているとされるが「全国一律に軟水を使うといった金太郎飴のようなやり方ではなく、その土地にあったオリジナルのコーヒーがあってもいい」と語るのは、前述したカフェ「スマイル」を運営する吉玉夫人(写真14)。

「スマイル」(写真15)は、奄美十景の1つである犬田布岬に位置し、月曜日定休で午前10時から午後6時まで営業。ハンドドリップ抽出した徳之島コーヒーをはじめとするコーヒーや地産のものを積極的にとりいれたフードメニューを提供している。 → (写真下記事続く)

写真⑭(カフェ「スマイル」吉玉夫人)
写真⑭(カフェ「スマイル」吉玉夫人)
写真⑮(カフェ 「スマイル」)
写真⑮(カフェ 「スマイル」)
写真⑯(純黒糖)

地産品は、コーヒーとともに出されるミネラル豊富な純黒糖(写真16右下)をはじめ、同じくミネラル豊富な塩、柑橘類のシークニンや徳之島はちみつ(写真17)を使ったジュース、スモモのジャム、ピザとの相性がいい島とうがらしのスパイスなどと多彩に取り入れている。嗜好品もコーヒーだけでなく隣町の天城町の島紅茶(べにふうき)も提供している。

犬田布岬(写真18)は徳之島の南西部に突き出た岬となっており、切り立った断崖絶壁の岩肌が見渡せる(写真19)。奄美群島国定公園特別地域(犬田布岬公園)内(写真20)には、芝生が広がる中に戦艦大和の慰霊塔が佇んでいる(写真21)。

「スマイル」の繁忙期は、里帰りが多い5月の連休と学生の合宿が活発となる8~9月。場所柄、1~2月は強い季節風にさらされることがあるという。 → (写真下関連リンク)

写真⑰(はちみつ)
写真⑰(徳之島はちみつ)
写真⑱(犬田布岬)
写真⑲(犬田布岬断崖)
写真⑳(奄美群島国定公園特別地域-犬田布岬公園
写真㉑(戦艦大和 慰霊塔)
写真㉑(戦艦大和 慰霊塔)