消費税問題 政府が総額表示推奨へ 重大なデフレリスク再来 スーパーなど反発必至

政府が検討している次期消費増税時(19年10月)の需要変動対策が先週相次いで報じられたことを受け、食品業界に動揺が広がっている。増税前後に生じる駆け込み需要と反動減の抑制に向け、前回増税時(14年4月)に禁止した消費税還元セールの解禁などを目指すものだが、検討案の中に「総額表示の推奨」が含まれていることから、総額表示から税別表示への切り替えによってデフレ脱却の糸口をつかんだスーパーなどの反発は必至だ。

需要変動対策の検討は4月に新設された関係省庁会議(消費税率引上げによる需要変動の平準化に関するタスクフォース、以下TF)の中で進められている。

その設置が決まった2月の経済財政諮問会議の中で、茂木敏充内閣府特命担当大臣は「(増税前後の需要平準化に向け)税率引上げ後の一斉値上げではなくて、弾力的な価格設定も推奨すべき」「イギリスではそのような価格設定が可能であり、また、内税表記であることもあって、消費者の過敏な反応が抑制されている」と述べている。このことが消費税還元セールの解禁や総額表示の推奨といったTFの具体的検討テーマにつながった。いずれも前回増税時に施行された消費税転嫁対策特別措置法に逆行する動きだ。

同特措法では、事業者間の確実な税転嫁を目的に、納入業者に対する買いたたきにつながりかねない消費税還元販促を禁止するとともに、消費マインドに配慮して総額表示義務を緩和。04年以前の主流であった税別価格表示を容認した。

このうち、消費税還元販促の禁止については、企業の自助努力に基づく自由な営業活動をも阻害する行き過ぎた規制という見方も根強いが、税別表示の容認に対する食品製配販三層の評価はきわめて高い。

日本スーパーマーケット協会の川野幸夫会長(ヤオコー会長)は、昨年末の記者会見で食品スーパーの業績が14年以降、堅調に推移した最大の要因として税別表示への切り替えを挙げ、現行制度の恒久化を求めていく考えを示した。日本チェーンストア協会、新日本スーパーマーケット協会、日本加工食品卸協会なども同様の税制改正要望を継続的に行っている状況だ。

昨年度のスーパーマーケット年次統計調査によれば、税別表示を採用する食品スーパーは90・9%と圧倒的な割合を占めている。軽減税率対象の食品の税率は次期消費増税後も8%に据え置かれるが、仮に食品スーパーらがそのタイミングで割高感のある総額表示に切り替えた場合、増税前の駆け込み特需もないまま深刻な販売不振に見舞われる恐れがある。

04年の総額表示の義務化に際し、スーパーなどは値頃感の維持を目的に割安な食品セカンドブランドの取り扱いを強化。これによって販売量を落としたトップブランドが販促費を積極的に投下したことで、食料消費者物価指数は垂直的に落ち込んだ。その後、穀物投機などによる07~08年の原資材価格の高騰で一時的に持ち直したが、08年のリーマンショックを境にデフレ傾向が再発。14年の税別表示の容認に至るまで価格上昇の糸口をつかめない状況が続いた。

食品業界は今後、複雑な軽減税率制度への対応に向け、システム改修や事業者間取引ルールの整備を急ぐ必要がある。しかし、デフレに直結しかねない総額表示の推奨という重大な動きが出てきたことで、軽減税率対応に遅れが生じる恐れもある。

消費税転嫁対策特別措置法の期限は21年3月31日まで延長されているが、政府はその改正を視野に入れており、関係省庁と接する食品流通団体等の動きが一挙に慌ただしくなりそうだ。今月6日以降のTF関連報道を受け、既に日本スーパーマーケット協会は消費税還元販促の緩和と合わせた価格表示の恒久的緩和を経済産業省に求めている。