安全装備が生産性のカギ
ダイハツ工業は昨年11月、軽商用車「ハイゼットカーゴ」をマイナーチェンジし、最新の予防安全機能(スマートアシストⅢ)を搭載して安全性能を大きく向上させた。1月31日から東京ビッグサイトで開かれたフランチャイズショーにも出展し、多くの来場者に安全安心への想いを伝えた。“働く人の毎日も守りたい”という姿勢と共に、ドライバーの不足や高齢化といった食品業界の課題解決にも一役買いそうだ。
最新の安全装備(スマートアシストⅢ)搭載
ユーザーの声に耳を傾けながら新たな価値を付与した「ハイゼットカーゴ」。グレードや駆動系は従来モデルを踏襲しつつ安全性を大幅に向上させている。
背景として、安全機能に関するニーズの急速な高まりが挙げられる。ドライバーの高齢化などによる交通事故の報道が増え、懸念が広がっている。安全装備を充実させればコストも増大するとの声もあろうが、ひとたび事故が発生すれば被害者への賠償もさることながら会社やブランドへの信頼に傷がつくだけでなく、補償や修理のコストもかさむ。同社は「安全装備は作動しない方が良いが、万が一に備えた保険のようなもの」と語る。
また職場の安全性向上は、人手不足が深刻化する中で採用や定着に関する差別化のポイントにもつながることから、食品業界でも特に生産現場などでは強く要求されているところだ。
国が安全運転サポート車の普及啓発策「セーフティ・サポートカーS(サポカーS)」に取り組んでいることも後押しし、自動車に関する国、自治体や大手企業の入札条件も変わりつつある。以前は排ガス性能や燃費が重視されていたが、最近では安全機能がより強く求められるようになってきた。
安全装備の義務化は、商用車の中でも事故時の被害が大きい大型トラックから順次進んでいるが、ダイハツ工業は販売台数が多く高齢ドライバーが多い軽商用車にこそ必要性が高いと判断。最新の予防安全システム「スマートアシストⅢ(スマアシⅢ)」の導入を決断した。
「スマアシⅢ」は各種の安全機能を含むが、最大の特長は軽商用車としては初(18年1月現在)となる“歩行者も認識して作動する衝突回避支援ブレーキ機能”を採用したことだ。
走行中に前方の車両と歩行者を認識、衝突の危険があると判断されれば警告音で注意喚起し、更に接近すれば緊急ブレーキで衝突回避や被害軽減に寄与する。
さらに車線からのはみ出しを検知して警告する機能も搭載。また最近多く報道されているブレーキとアクセルの踏み間違い事故を防ぐ誤発進抑制制御機能も備えた。ステレオカメラやソナーセンサーで障害物を検知すると、アクセルを強く踏み込んでも急発進を抑制、警報音が鳴る。「サポカーS」の定義でも最高ランクの「ワイド」に該当するほどの充実ぶりだ。
他にも信号待ちでのうっかりを防ぐ先行車発進お知らせ機能、ハイ・ロービームを自動で切り替えるオートハイビーム、バック駐車をサポートするリヤコーナーセンサー、急なハンドル操作やコーナリング時に横滑りが発生した場合に、ブレーキとエンジン出力を自動的にコントロールして車両安定性を確保するアクティブセーフティなど、高い安全性能を備えている。
「世の中の全ての車に予防安全機能が『あたりまえのもの』となる未来を目指してスマアシの普及を促進させている」とする同社は「安全・安心を限られた人だけでなく、車に乗る全ての人にお届けしたい」と語る。
ダイハツ工業の乗用コンパクトカーには、スマアシがほぼ標準装備。多くの車両に搭載することでコストダウンを実現し、ベース車両に比べて6万円ほどの上昇に抑えている。今後も“良いものを安く”という考えのもとでクルマ作りを進めたいという。
リペアビリティの良さが支出を抑える
安全性と共に商用車に求められる経済性も魅力であり、ハイゼットシリーズ基本コンセプトの一つでもある。
フロントバンパーには角部だけを交換できる別体パーツ「コーナーピース」を装備。黒色で傷が目立ちにくく、傷がついてもバンパー全体ではなく、コーナーピースのみの交換で済むことから修理費用を抑えることができるだろう。
また運転状況や道路勾配などを総合的に判断して作動するアイドリングストップ機能も搭載し、減速時の燃料カットと組み合わせることで極限まで燃料消費を抑制するという。仕様により異なるが、燃費は16.0~18.8km/ℓ。
ドライバーのストレスも軽減する使い勝手
商用車として重視すべき積載能力も充分だ。荷室スペースは広く、また積み下ろしがしやすい大きな開口部と低い床(荷室フロア地上高635㎜)は高齢ドライバーに優しいだろう。パンケース(680㎜×420㎜×100㎜)なら66ケースを、ビールケース(445㎜×365㎜×315㎜)なら36ケースを積載できる。
さらに荷室だけでなく、運転席周りの収納も今回のモデルチェンジで使い勝手を大きく向上させている。間口の広い大型のトレイや頭上の棚など豊富な収納力を備えている。手に取りやすい位置にボトルホルダーも装備され、1動作で収納物にアクセス。シンプルだが使いやすい構造となり、効率化だけでなく、一日の多くを車内で過ごすドライバーのストレス軽減にも貢献し、“働き方改革”の思想とも親和性が持てそうだ。
最小回転半径を4.2mとし狭い路地や曲り道、駐車場、縦列駐車でも楽に取り回せる。狭い路地の飲食店や店舗への配送にも力を発揮しそうだ。
フロントマスクもスタイリッシュなデザインへ刷新し、安心感・どっしり感を表現。末広がりのグリルで頼もしく精悍な表情を生みだした。
ボディーカラーは定番の白・シルバーの他にファインミントやライトローズなど華やかな色を含む全7色を用意し、多様化するニーズに対応している。
「軽商用車にこそ安全機能を」と語るダイハツ工業は一人でも多くの人に伝えることを使命として、3月まで飲食サービス業や小売業、建設業向けの車両展示イベントを展開していく考えだ。
食品業界展示会に出展 ー 安全・収納に驚きの声
ダイハツ工業は1月31日~2月2日に東京ビッグサイトで開かれた「日経メッセ 街づくり・店づくり総合展 フランチャイズ・ショー2018」(日本経済新聞社主催)に出展。食品業界に向けて「ハイゼットカーゴ」を広くアピールした。
今回で34回目となるフランチャイズ・ショーは、人口減少と少子高齢化の中で、これからの流通・小売・サービス・通販業が「健康で安全・安心な地域づくり」などといった様々な課題を克服していくための最新ソリューション、ビジネスモデルを展示・提案するもの。当該分野では日本最大級の総合展示会といわれる。
フードサービス業・その他サービス業・小売業のフランチャイズ(FC)本部のほか、FC支援、課題解決ソリューション、コンサルティング、出版など多岐にわたる分野の紹介が行われ、227社が参加した。ダイハツ工業の出展は初。当展示会への自動車出展は同社のみだった。
ブースでは実演販売士がデモンストレーションを行い“仕事に差をつける”ポイントなどを紹介。来場者からは特に安全性能と収納力に注目する声が多く聞かれた。
ある貨物業者の管理職は「我々にとって安全という課題は非常に重要だ。事故時の負担は一時的なものだけではなく、保険料の上昇等も含まれる」といい「わずか6万円程度のコストアップで充分な安全性能を得られる」と目を見張った。不動産業の男性も「高級車並みの安全性能の割には安い」と安全と経済性の両立にも注目していた。
たまたま立ち寄った小売業者も「軽商用車とは思えない安心感がある」と評価。FCを検討する個人も「人まで検知してくれる安全機能には驚いた」と語る。
刷新で充実した運転席周りの収納にも高い評価が寄せられた。特にボックスティッシュやファイルなどを頭上収納できるオーバーヘッドシェルフに注目が集まり、「A4サイズを収納できるのは助かる。これまではサンバイザーに書類を挟んでいたが、走行中に落ちることもあったが、これで解決できる」と喜びの声も。
荷室の広さも好評だ。展示車を覗き込んだ人達からは一様に「思ったより広い」と感嘆が上がった。仕事でも趣味でも軽商用車を利用するという建設業者は「荷室が広く、出し入れしやすい。小回りが利く車体も良い」と好印象。小売業の女性も「運転周りの収納が充実したからこそ広い荷室も有効活用できるのでは。(フロントバンパー角の)コーナーピースなど、この性能でこの価格はコスパが良いと感じる」という。
ある来場者は「食品業界が対象の展示会になぜ自動車が出展したのかと驚いたが、説明を聞いて納得した。安全性もデザインも向上しており、事業で車に乗る人は注目した方が良い」と賛辞を贈っていた。
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