健食 販売手法の確立急務 ー「食品特許」弁理士インタビュー

機能性表示食品制度

800件超、次のステップへ 乳酸菌人気続く食品業界

機能性表示食品制度が施行3年目に入り、受理件数も800件を突破した。これまでは「どうやって受理されるか」が業界関係者の一致した思いだったが、今後は「受理された商品をどうやって販売するか」の方が重要視される。

同制度はスタート時には届け出書類の再三の差し戻しによる受理ペースの遅れなど、幾多の問題、課題が生じた。エキス系素材への対応を含め、制度の根幹的な課題がまだ解消されていない。だが受理数が加速的に増加する中、これまでそっぽを向いていた企業が「いよいよ無視できなくなった」(通販業者)のは確か。

市場を下支えする素材メーカー、受託企業をはじめ通販、店販の多くが機能性表示食品制度が普及する中で新たなビジネスモデルを構築しようとしている。大手による寡占化傾向もうかがえるが、新規素材や新規技術、海外市場など切り口が豊富なだけに、後発参入、中小企業にも勝機は十分あり、今シーズンの市場はさらに活況を呈しそうだ。健康食品市場の現況をまとめた。

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知的財産を守る動き活発化 食品特許の必要性高まる
三枝国際特許事務所 副所長・弁理士 中野睦子氏 インタビュー

三枝国際特許事務所 中野睦子弁理士
三枝国際特許事務所 中野睦子弁理士

三枝国際特許事務所(大阪市中央区道修町、林雅仁代表社員)は、昨年4月からスタートした食品の用途発明に関する特許庁の審査基準改訂に対応し、健康食品分野における知的財産権全般に関するサービスを強化している。同分野ではトクホ制度に続く機能性表示食品制度の導入により、素材や商品の開発が活発化している。このため、今後、特許および商標をはじめとする知的財産権の保護は一段と重要になる。

同事務所には、大阪および東京を拠点に計37人の弁理士が在籍する。弁理士が各自の専門分野に応じて「化学・バイオ部」「機械・電気部」「商標・意匠部」の3部門に分かれて顧客サポートを行っている。今春は東京ビッグサイトで開催された「健康博覧会」に出展。会場での講演を通じ、知的財産の保護の重要性および活用法について説明した。反応は予想以上で、メーカー各社から相談、依頼が増加している模様だ。同事務所副所長・中野睦子弁理士に聞いた。

― 食品について用途発明が認められるようになった経緯を教えてください。

(中野) 特許庁は長年「食品自体が用途である」という考えの下、食品の3次機能(体調調節作用)について用途特許の成立を認めていなかった。また、食品業界でも市場での紛争を懸念して食品に用途特許を認めることに反対の声も多く、足並みが揃わなかった。

その流れを大きく変えたのは、2015年4月に導入された機能性表示食品制度だ。トクホに比べて取得が容易なため機能性表示食品を開発提供する企業が増え、消費者に広く認知されたことで市場は拡大、食品業界から機能性表示食品の研究開発にかけた投資を回収する道が欲しいと、特許を求める声が高まった。これを受けて特許庁は食品の用途発明に関する「特許・実用審査基準」を16年4月に改訂し、運用を開始したというのが大まかな経緯である。

― 特許の出願から承認までは。

(中野) 特許出願した後、3年以内に審査請求をして初めて審査されるという流れになる(図表参照)。審査により、先行技術がないなど、拒絶理由がない場合はストレートで特許査定になるが、それが良いとは一概に言えない。拒絶理由通知を受けることで、先行技術と差別化し、また申請書類(明細書および特許請求の範囲)を再度見直して整備することができる。つまり拒絶理由通知は、真に有効な特許を取得するために有用な機会としてとらえることができる。

―特許が独占排他権という権利だけに、より慎重であった方がよいということですね。

(中野) 食品に関する発明の技術内容は、扱う素材が限られていることから比較的シンプルだ。逆にシンプルな技術だけに従来技術と差別化して特許にするのは難しいといえる。このため、用途発明も含めて特許の取得には、特許庁の審査基準や運用を知っておくことはもちろん、権利化された特許発明がどのように解釈されるか、裁判例を含めて理解しておくことが重要になる。

なお、特許後の権利範囲の広さと強さを考えれば、用途を限定せず、組成物や食品そのものとして権利を取得することが望ましい。新規性や進歩性の点でそれが難しければ、ビジネスで使用するヘルスクレーム(健康強調表示)を考慮した上で、用途発明として「こうすれば取得できるのでは」といった提案を行っている。そういう意味で、薬理データを見て、しっかり判断できる目がある点は、弊所の強みと言えるのではないか。

― 御事務所は歴史の古い事務所ですね。

(中野) 1946年に創立し、昨年70周年を迎えた。大阪オフィスがある道修町は、薬種問屋が多く軒を連ねた「くすりの町」だった。こうした土地柄から、化学系弁理士が歴代の所長を務め、特許については化学およびバイオを最も得意な分野としている。また、古くから製薬企業との取引が多く約80か国以上、多くの国々に外国出願をしてきた。現在は商標も含めると海外100か国以上の弁理士、弁護士との業務提携関係を築いている。国内はもとより、海外における知的財産権全般(特許、実用新案、意匠、商標)に関する最新の知識と長年の経験に基づいたサービスが提供できるのも、ほかにはない弊所の強みだと考えている。

― 今後については。

(中野) 最近では、どの企業も権利に関してかなりシビアになってきている。特許取得だけでなく、他社の特許に対する抵触関係に関する相談も増えてきた。企業にとって他社の特許を侵害することは、損害賠償などの金銭的な損害だけでなく、社会的信用を失うことになりかねない。特に食品分野は、消費者層が広く世間の関心が高いため、特許侵害することで受ける企業のダメージは大きい。

こうした知的財産を重要視する傾向はさらに強まることが予想される。自己の実施(ビジネス)を守り確保する意味でも特許出願は重要である。今後、弁理士の専門知識を求める声は、より高まっていくものと考えられる。

4月21日健康食品特集・三枝国際特許事務所・チャート
4月21日健康食品特集・三枝国際特許事務所・チャート

(一部抜粋)