〈デフレ幻想を絶て〉マクロ統計報道を疑え 商業感覚と決定的なズレ

消費支出、食料増加も総額減少
背景に家賃・光熱費値下げ

総務省の家計調査によれば、昨年は二人以上世帯の実質消費支出が2月を除くすべての月で前年を下回った。同様に総合消費者物価指数(価格変動の大きい生鮮食品を除く)も2月以外のすべての月が前年割れとなった。このことが大手メディアを消費不況、デフレ再燃報道に走らせた最大の原因だ。しかし、既報の通り食料消費者物価指数は昨年12月まで40カ月連続でプラスを保っている。最大の消費財である食品がインフレに向かっているにも関わらず、政府の二大消費統計が低調に推移しているのはなぜなのか。その答えを家計調査の中から導き出してみよう。(文責=東京本社編成局・横田弘毅)

総務省が毎月発表する二人以上世帯の月次家計調査報告には、二つの指標が記載されている。一つは物価変動の影響を除外した実質伸び率、もう一つは当該影響を反映させた名目伸び率だ。直近の16年12月の場合、実質0.3%減、名目0.1%増となっている。名目のほうが高いのはインフレに傾いていることを意味する。

大手メディアは一般的に実質伸び率のみを取り上げるが、この数字は人口減少下で「量から質への転換」を目指す消費財製造.流通業にとって全く参考にならない。費目ごとの価格変動を踏まえて可処分所得の振り向け方を変えていく生活者の実像も見えてこない。今日の社会・消費・産業構造の中でわれわれが目を向けるべきは、消費数量を示す実質伸び率ではなく、消費絶対額を示す名目伸び率である。

このことを前提に16年の二人以上世帯の消費支出額と名目伸び率をまとめたのが上掲の表だ。食料は1.5%増と安定した伸びを見せているが、全費目の合計支出額は1.8%減と落ち込んでいる。足を引っ張ったのは主に住居(7.0%減)、光熱.水道(8.7%減)、交通.通信(2.9%減)だ。

では、なぜこの3費目の支出額が大幅に減少したのか。住居の場合、中分類の家賃地代(6.0%減/9万9千840円)と設備修繕.維持(8.0%減/10万302円)がともに激減している。その背景には住宅の供給過剰による家賃の下落と40代以下を中心に加速する持ち家比率の低下がある。この二つの現象はコインの裏表のような関係にあり、今後も住居支出をごく自然に引き下げていくことが予想される。

一方、光熱.水道の落ち込みは原油と液化天然ガスの相場下落に伴う電気.ガス料金の値下げによるところが大きい。電気代は8.7%減(12万1千196円)、ガス代は13.5%減(5万8千768円)である。

交通.通信では自動車等関係費(5.8%減/24万7千772円)が大幅に落ち込んだ。その内訳を見ると、使用年数の長期化や都市部の車離れによって自動車等購入(3.5%減/7万2千756円)も減っているが、それ以上に目立つのは自動車等維持(7.0%減/17万1千654円)の落ち込みだ。維持費の安い軽自動車へのシフトが原因と見られる。

つまり、昨年の消費支出を引き下げたのは、家賃、電気代、ガス代の値下がりであり、軽自動車の支持拡大である。軽の人気は高齢化によるダウンサイジング志向とも密接に関係する。これらはいずれも節約志向や消費不況、デフレ回帰とはおよそ縁のない現象だ。

(2月10日付本紙より一部抜粋)