國分勘兵衛 平成を語る〈3〉 消費税の変遷と課題

大切にしたい転嫁法 本体価格表示の恒久化を

平成元年(1989)の消費税の導入およびその後の段階的引き上げにより、食品業界はさまざまな対応に追われた。平成16年(2004)の総額表示の義務化によるデフレ激化という悩ましい問題もあった。その一方で消費税の導入・引き上げに合わせて革新的なロングセラー商品が多数出現するなど、プラスの側面もみられた。

――平成は消費税に始まり、消費税に終わる時代でもありました。今年10月には税率引き上げと食品を対象とする軽減税率制度の導入も控えています。今後の消費税税制の課題をどのようにお考えですか。

一番の問題は、税金が何に使われているのかがもう一つハッキリしないことではないでしょうか。もちろん、国民のために使っているということなのでしょうが、本来、最優先に考えなければならないのは1千100兆円を超える国の借金をどうするかです。財政健全化に向けて消費税に頼らざるを得ない状況であることも十分理解できます。

ところが、税率が上がっても国の借金は減るどころか増え続けている。これはいったい、どういうことなのかと。私たち国民は払った税金の使われ方をもっと勉強すべきだし、政府も歳出の実態を国民に分かりやすく伝えていくべきです。そういう緊張感のある関係を築き上げるためにも、消費税をどれだけ払ったかが明確な本体価格表示を継続していくべきだと思います。

――総額表示のほうが国民の痛税感が少ないという声もありますが、その痛税感がなければ歳出に対するチェック機能も高まりません。

まさにそういうことです。

――平成26年(2014)の消費税率の引き上げに際し、総額表示義務の緩和(本体価格表示の容認)と転嫁拒否行為の防止を柱とする消費税転嫁対策特別措置法が施行されました。この法律に対する食品業界の評価は極めて高いですね。買い叩き等の混乱が抑制されたほか、値頃感のある本体価格表示への切り替えによって食品スーパーなども息を吹き返しました。

そうですね。流通実態に配慮した優れた法律だと思います。ただ、再来年(令和3年(2021年3月)までの時限立法ですので、恒久化ないし延長に向けて業界として引き続き声を上げていかなければなりません。それから今、政府は今年10月の税率引き上げ後の駆け込み反動減対策として値引きセールなどを規制しないという方針を出していますよね。

――ええ。消費税還元販促自体は特措法で禁止されていますが、値引き自体は自由とのことです。

増税分を小売業に負担させることになりかねないので、これはちょっと違うかなと思います。軽減税率制度についても財政問題を考えると複雑な気持ちです。持ち帰りと店内飲食の把握などで運用に新たな負担が生じてしまう部分もあり、よりシンプルで混乱の起こりにくい制度にしていく必要があると思います。(つづく)