体内冷却で熱中症対策 飲む氷で身体の芯から冷やす 「ポカリスエット アイススラリー」 大塚製薬

点滴注射液の代替である“汗の飲料”として発売された「ポカリスエット」。運動時の発汗や風呂上がり・起床後の生活発汗、風邪・感染症による発汗などの日常課題に対応して飲まれ続けてきたが、熱中症による救急搬送人員数が一向に減らないことから大塚製薬は、身体の熱に直接アプローチする新商品「ポカリスエット アイススラリー」を開発した。

12日から夏季限定商品として同社通販サイトで発売開始した。ターゲットは暑熱な環境でも防火服を着装して消火活動に当たる消防隊員や暑熱環境下で働く人たち。

消防局では深部体温(内臓の温度)38・5度を警戒体温として注意を呼び掛けており、気温35度・湿度60%の環境下で防火服を着て活動すると18分で38・5度に達するという研究報告がなされている。細胞は42度でたんぱく質が固まり死に至るという。

12日、都内で発表会に臨んだ井上眞専務取締役ニュートラシューティカルズ事業担当は「約3年前から研究開発をスタートし、産・官・学連携による2つの臨床試験を昨年実施した。今回の研究と製品開発は懸命に救援活動に尽力される消防士の方々に少しでもお役に立てればと思っている」とあいさつした。

熱中症対策で重要とされるのが水分補給と体温低下である。臨床試験に携わった産業医科大学の堀江正知教授は、体温低下には冷水をかぶる体外冷却法と体内冷却法があると紹介した上で「体外冷却法は筋肉が冷え筋の代謝が落ちると言われている。一方、最近論文が増えてきているのは体内冷却法で、スポーツでも成果が上がるのではないかと研究されている」と説明した。

臨床試験では、アイススラリー(液体の中に微細な氷の粒がたくさん混じった粘度の高い飲み物)の摂取で消防士活動時の深部体温上昇抑制を確認。「30分ほど、0・3度下げる効果がある。外国では0・1、0・2度下がれば良い方なので、しっかり下がっている」と述べた。

大塚製薬の只野健太郎ニュートラシューティカルズ事業部サイエンスコミュニケーション担当課長は、アイススラリーを飲むと深部体温の上昇が抑えられた結果、発汗量も抑えられると推察。「無駄な発汗が少なくて済むため脱水を軽減する可能性が示された」ことを指摘した。

「ポカリスエット アイススラリー」のコンセプトは“氷が飲める、身体の芯から冷やす”。

同商品の開発に当たり、大塚製薬の浅見慎一ニュートラシューティカルズ事業部製品部ポカリスエットプロダクトマーケティングマネージャーは、モル凝固点降下の作用を紹介。「真水を凍らせると0度で大きな結晶となり塊になるが、水以外の素材が入っていると0度でも水の小さな分子だけが凍り流動性を持った液体になる。当社では結晶を小さく保ち流動性を持たせることにこだわり“氷が飲める”を実現した」と語った。

一般的にアイススラリーの製造には特殊な技術や設備が必要な上、長期間の保存が困難であるが、同社は常温保存可能な液体を凍らせてスラリー状にする独自技術を開発し再冷凍してもスラリー状にすることに成功した。